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水着や下着姿のNPCも登場?

中国IT小話――官製腐敗防止ゲーム『清廉戦士』、その“立ち上げ”から“一瞬で終了”まで

2007年09月03日 20時31分更新

文● 山谷剛史

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若者の教育もできて、一石二鳥だ?


 清廉戦士がリリースされるや、ゲームのテーマが斬新なのか、官製ゲームがためか、多数のメディアやブロガーがこれを紹介した。

 中国メディアの中には『教育もできるから清廉戦士はスーパーマリオを越えたか!』(7月31日付東方早報)なんて記事を書くメディアもあった。

 しかし、多くのメディアやブロガーの論調は「ゲームで遊ぶ若い世代はまだ腐敗を経験するはずがないし、一方で腐敗を経験済の公務員らが職務時間中にこれで遊んでいたらそれこそ腐敗だ」「このゲームを通して腐敗は何かを教えていて矛盾している」「武器などで腐敗官僚を斬り捨てること自体が正しいことではない」と辛口なものとなっている。

起動時に表示される画面2

清廉戦士の画面

 多くのメディアが紹介したことにより、「7月末には1日で10万ダウンロードを記録し、登録人数も7000を越えた」とニュースは報じた。ところがゲームの運用が開始されたばかりの8月14日に「関連部門の通知で本サイトは閉鎖し、別サイトに移転予定」と公示、その後メッセージは「アップデート中、乞うご期待!」なる内容のメッセージとなった。

 いわく、予想以上の利用者がいるためソフトウェアやハードウェアのアップデートが必要とし、突如このゲームは遊べなくなったということだろう。大手ポータルサイトの新浪の8月18日付けの記事によると、同サイトの記者が清廉戦士を扱う寧波市海曙区の政府関連部署に電話取材を行ったところ「そんなゲームは知らない」としらばっくれるという事態になった。清廉戦士は黒歴史となったのだろうか。



突然のサービス終了、謎は深まるが


 ゲームサーバーが停止し、公式サイト閉鎖となった理由についてはいまだに公式なコメントは出ておらず推測の域を抜け出られない状態だ。その理由は上述した、利用者の想定外の激増、ゲームテーマに関する批評だけがその理由ではないようだ。

 ブロガーによるゲームプレイレポートがリリース後多数掲載されたが、これを見ている限り残念ながらこのゲームを名作と呼ぶ人は少ないようだ。

グーグル

グーグル中国画像検索結果

ヤフー

ヤフー中国画像検索結果

起動時に表示される画面

MSN Live Searchの画像検索結果

百度画像検索結果

百度画像検索結果

 インストール画面からシステムまで、中国のオンラインゲームプレーヤーにとっては“どこかで見た”ものが多くパクリ疑惑があること。腐敗官僚の愛人がビキニや下着姿で出て主人公を誘惑する、腐敗官僚の多すぎる家族が一丸となって攻めてくるなど、ゲームプレイヤーを納得させることができていないゲーム内容であること。

 また例えば、“寧波”の表記が、あるメッセージにおいて“波寧”と書かれるなど誤植が多く、また皇帝から命じられるミッションの文章が分かりずらく、テキストでも詰めの甘さが目立っているという。

 ゲームプレイレポートのブログ記事の感想欄にはこのゲームについて“ゴミ”など散々な評価が書かれている。最も多くのブログに転載され、紹介された人気の清廉戦士ゲームプレイレポートのブログ記事は、現在検索をかけると文章は読めるものの、画面キャプチャのイメージ画像がことごとく消えているので、残念ながらそれを画像で確認することは難しい。

 とはいえ、突っ込みどころの画面でなくとも清廉戦士のゲーム画面を見てみたい人もいるだろう。“グーグル中国”“ヤフー中国”“MSN中国”の画像検索で、清廉戦士(の簡体字中国語)をキーワードに検索をかけると、ゲーム画面を確認できる。だが百度で清廉戦士をキーワードに画像検索すると前者と比べて検索結果が非常に少ないことは興味深い。


山谷剛史(やまやたけし)

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。

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