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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第1回

ウォークマンが“ATRAC”を捨てた理由

2007年09月03日 21時07分更新

文● 編集部、語り●津田大介(ITジャーナリスト)

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「もはやフォーマットによる囲い込みは終わった」


── ソニーといえば、独自技術のATRACを押してきたイメージが強いが、なぜ今になって廃したのか?

津田 アップルが“iTunes Store”(以下iTS)で先行していたこともあって、CONNECT Music Serviceは、米国や欧州でまったく普及しなかった。

音楽配信といえば 現在はiTSが主流。そうは言っても、Napsterなどサブクスクリプション型(定額型)のサービスも対抗勢力として伸びてきている。そうしたサービスにおいて、配信される音楽ファイルのフォーマットはWMAがスタンダードだ。「音楽配信サービスにATRACを食い込ませるのが難しい」「それならわざわざ音楽プレーヤーでも使うこともないよね」という話だと思う。


── 日本では“mora”を始め、ATRACフォーマットを利用した音楽配信サービスが、一定の地位を占めている。海外ではそんなに厳しい状況なのか?

津田 ほとんど知られていない。それ以前に欧米では、MDも定着しなかった。MDが売れていたのは、主に日本市場である。ATRACは、もともとMDに採用されていた圧縮フォーマットなので、MDがもう少し広まっていたら、話は違っていたかもしれない。

ATRACはソニーが作ったクローズドなもの。一方で、iTSが採用している“AAC”は、DRMフリーであれば、他社でも対応機器が作れるオープンなフォーマットだ。そうした背景もあって、ATRACは他のハード/ソフト/サービスメーカーを巻き込んで展開しにくかったのかもしれない。

もはやフォーマットでユーザーを囲い込む時代は終わったのだ。アップルがAACの採用でそんな囲い込みを解放した。ソニーはそれに負けたというのが結論だろう。今回発表されたソニーの携帯型音楽プレーヤーは、ATRACを捨てた一方で、DRMなしのAACにも、WMAにも、MP3にも対応している。今後、携帯型音楽プレーヤーは、バッテリーや音質、ガジェットとしての魅力で競争していくことになるだろう。

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