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石井裕の“デジタルの感触” 第7回

石井裕の“デジタルの感触”

デジタルの命を持つ粘土と砂

2007年09月01日 22時45分更新

文● 石井裕(MITメディア・ラボ教授)

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TUIの有効性を明確に伝えるUrp


 Urpと、今回紹介したIlluminating Clay/SandScapeを対比すると、オブジェクト指向のCADソフトと、ビットマップ指向のスケッチソフトの違いに似た関係を見い出せる。都市計画や景観デザインは、その上流工程と下流工程においては、情報の構造化の度合いも、必要とされるツールの持つ精度や使用スピードも異なる。

 設計の上流ではデザイナーの審美的なアイデアを自由に表現できる物理メディア(例えば、粘土や砂)が好まれるが、設計の下流ではコンピューターを用いたデジタル情報が不可欠になる。その間には大きな谷間が存在し、せっかく物理メディアで初期デザインをしても、一度スキャンしてデジタル世界に取り込んだが最後、物理メディアの持つよさが消えてしまい、2次元スクリーン上のピクセルに取って代わられる。

 離散的で構造がカチッと規定されなければならないUrpと、連続的で形状が自由に変更できるIlluminating Clay/SandScapeという2種類のシステムを結ぶ線上に、情報の構造がいまだ不確定な上流工程から、構造が明確化し、その細部を詰めるべき下流工程とを結ぶシームレスなデザイン支援環境のあるべき姿が見えてくるだろう。

(MacPeople 2006年1月号より転載)


筆者紹介─石井裕


著者近影

米マサチューセッツ工科大学メディア・ラボ教授。人とデジタル情報、物理環境のシームレスなインターフェースを探求する「Tangible Media Group」を設立・指導するとともに、学内最大のコンソーシアム「Things That Think」の共同ディレクターを務める。'01年には日本人として初めてメディア・ラボの「テニュア」を取得。'06年「CHI Academy」選出。「人生の9割が詰まった」というPowerBook G4を片手に、世界中をエネルギッシュに飛び回る。



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