社会保険労務士 中谷充宏 ワタシとカイシャの深ーい溝 労働環境の危険な落とし穴 第8回
最終回 損しない転職をしよう 意外に気づいていない収入変化のポイントをおさえる
2007年04月11日 00時00分更新
転職すると損をする?
会社を変わることによって、若い世代が意外に考慮していないのは、退職金の積み立てがリセットされてしまうことです。
退職金は賃金と同じく、転職適齢期(25歳~35歳)にはグンと上昇する場合が多いのですが、これを無視して、転職先の年収額にばかり目が行くことが多いのです。たとえば、私の場合でいうと、大学卒業後にいったん就職し、その後1度の転職を経て、独立したのが35歳。もしも、入社した会社を独立するまで辞めずに勤務していたら、実際おおよそ800万円以上もの退職金を得ることができたはずでした。
しかし、早い時期で転職したためにもらえた退職金の額は最初の勤め先から100万円ちょっと。これに独立前に勤務した会社の退職金100万円程度を合計して200万円。つまり、退職金の受給額カーブが上昇する前に辞めてしまったわけです。そのため転職せずにキャリアを積んでいた場合の収入の差は、何と600万円にもなってしまいました。
転職の際には新しい会社の給与の額だけに目がいきがちです。しかし、意外にこういったデメリットに気づかないことが多いのです。また、間接的ではありますが、金銭的損になる可能性として、転職前の会社だからこそ享受できたサポート体制があります。
たとえば自己啓発支援制度や食事補助、共済制度、保養施設の利用などの福利厚生。これらはそれぞれの会社の制度にもよりますが、ほぼ全部使えなくなる場合など、金銭的には大きな損へとつながることがあります。もちろん新しい転職先のサポート体制の方が転職前より良い場合もありますが、これらのことも意識に入れ、自分のプライオリティをどこに置くかを考えなくてはなりません。
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