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石井裕の“デジタルの感触” 第6回

石井裕の“デジタルの感触”

タンジブル・ワークベンチ

2007年08月29日 22時04分更新

文● 石井裕(MITメディア・ラボ教授)

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TUIの有効性を明確に伝えるUrp


 現実の仕事において、従来のGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を用いたアプローチに比べ、TUIが本当により大きなメリットをもたらし得るのか? ──この疑問に対して初めて明快に答えることができたのがUrpである※1。I/O Bulbという概念の発明にとどまらず、具体的にその有効性・優位性を示すアプリケーション分野(この場合は都市計画)を見い出し実演することで、TUIの可能性を広く伝えることができた。

※2 Urpプロジェクトのコア・コンセプトであるI/O Bulbは、「建築空間の何百、何千という電球をI/Oバルブに取り替えたら、どのようなインタラクション・デザインが可能になるか?」というまったく新しい問いを投げかけることで、机の表面にとどまらず、建築空間全体を新しいデジタル・デザインと統合できる可能性を示すことにも成功している。

 TUIのデザインでは、何に物理的実体を付与してつかめるモノにするか、何をデジタル・イメージのままで表現するかという判断が重要となる。さらに、両者をいかに有機的に結合させて、デジタル世界と物理世界の境界を透明にするかが、インターフェースが成功する鍵となる。この問題に対し、Urpのビルディング・モデルが投げかけるデジタル・シャドウはひとつの明快な回答となろう。

 なお、Urpシステムは、'00年からMIT都市計画学部の学生プロジェクトに実験的に使用されている。

 次回、インターフェースの透明化について、「MusicBottles」を紹介する。

(MacPeople 2005年12月号より転載)


筆者紹介─石井裕


著者近影

米マサチューセッツ工科大学メディア・ラボ教授。人とデジタル情報、物理環境のシームレスなインターフェースを探求する「Tangible Media Group」を設立・指導するとともに、学内最大のコンソーシアム「Things That Think」の共同ディレクターを務める。'01年には日本人として初めてメディア・ラボの「テニュア」を取得。'06年「CHI Academy」選出。「人生の9割が詰まった」というPowerBook G4を片手に、世界中をエネルギッシュに飛び回る。



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