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石井裕の“デジタルの感触” 第6回

石井裕の“デジタルの感触”

タンジブル・ワークベンチ

2007年08月29日 22時04分更新

文● 石井裕(MITメディア・ラボ教授)

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タンジブル/インタンジブルな情報表現の組み合わせ


 連載第4回で紹介したように、「Tangible User Interface(TUI、タンジブル・ユーザー・インターフェース)」は、触れて感知できる「タンジブル」な物理的情報表現を用いることにより、表現メディア(出力)そのものを操作のメカニズム(入力制御)としても直接利用できるという基本アイデアの上に成り立っている(参考記事)。

 前回は、そのデザイン例として入出力一体型の「inTouch」と「curlybot」を最も純粋なTUIとして取り上げた。しかし、入出力一体型TUIの出力は動作(アクチュエーション)が主体であり、複雑かつ多様なアプリケーションを実現するには、おのずとその表現力に限界がくる。

 我々MITのタンジブル・メディア・グループはその限界を超えるため、物理的(タンジブル)な表現と、例えばビデオ・プロジェクションが織りなす「デジタル・シャドウ」といったインタンジブルな表現をシームレスに組み合わせ、ダイナミックな情報の変化と直接的なインタラクションを可能にするTUIに取り組んできた。具体的には、センサーを埋め込んだテーブルの上にタンジブルな外部表現として建築物の物理モデルを置き、それに対するユーザーの操作をセンサーに追跡させる。そして、センサーから送られるデータをもとに、コンピューター内部のデジタル情報モデルと、机の上の物理表現を密に結合するのだ。

 それらを総称して「Tangible Workbench(タンジブル・ワークベンチ)」と呼び、専門家によるデザインを支援するワークベンチ(作業台)として、未来の机のプロトタイプを作り実験を重ねてきた。その特徴は、タンジブルな情報表現(つかめるモデル)とインタンジブルな情報表現(ビデオ・プロジェクション)を組み合わせることにある。

 '96年に試作した「metaDESK」に始まり、「Illuminating Light」「Sensetable」「Illuminating Clay」などのプロトタイプを開発してきたが、今回は「Urp」を紹介しよう。


(次ページに続く)

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