日本ヒューレット・パッカード(株)の“HP Photosmart A”シリーズはコンパクトインクジェットプリンターで、2L判サイズの用紙にも対応する点や比較的手ごろな価格(同社直販価格で2万4990円)が魅力の製品だ。ここでは、最新モデル『HP Photosmart A628』(関連記事1)の使い勝手を紹介する。
本体形状は同社の従来機の『HP Photosmart A616』(およびHDD内蔵モデルの『同 A716』、関連記事2)を継承している。具体的には、やや“おむすび”型のボディー前面に排紙し、背面には給紙スロット、上面に液晶パネルを配置するというフォルムだ。上面にはめ込まれた“可倒式ハンドル”や、フロントパネルを軽く引き開けると自動的にロックが外れて液晶パネルが立ち上がり、同時に後部の給紙トレイも開くというギミック(動画参照)も同様だ。
印刷ユニットは従来機と同様の3色一体カートリッジ使用の最高解像度4800×1200dpiエンジンで、最大2L判対応も変わらないが、印刷速度はA616のL判36秒から39秒と若干遅くなっている。
なにより大きく変わったのは4.8インチワイド(画像表示エリアは3.5インチ)という大型液晶パネルの搭載だろう。プリンター複合機はスタンドアロンでデジタルカメラ画像の印刷を行なう必要性や、他社との差別化もあって液晶ディスプレーを大型化する傾向にあるものの、2~2.5インチがほとんどのポータブル機としては破格のサイズで、ほとんどA4複合機に付いていてもおかしくないサイズだ。A716で採用されていたTV出力機能は省略されているが、大画面液晶パネルのおかげでその必要性は少ないという判断なのだろう。
さらに液晶ディスプレーはタッチパネルになっており、機械的なスイッチの類は電源のON/OFFボタンのみと簡略化されている。タッチパネル式操作部は液晶ディスプレーの表示エリア両サイドに配置されており、普段は黒い部分に必要に応じて“メニュー/左右送り/戻る”といった機能別アイコンが表示される。画面中に常時アイコンが表示されるよりもずいぶんシンプルで、スライドショー機能を使ってデジカメで撮影したメモリーカード内の画像を閲覧する際にも、表示がやかましくならない工夫だ。メニューを起動して細かく設定する際は、液晶パネルの表示エリアをタップすることになるが、ほとんどの操作は画像の外側にあるアイコンだけで済むため、液晶ディスプレーの中央付近が“手の脂で汚れる”ことは少ない。液晶パネルのすぐ横にはスタイラスが格納されているほか、スタイラスを立てておけるスタンドが用意されており、なるべく液晶パネルの表面を指で触らなくても済むように配慮されているのはありがたい。
インターフェースはタッチパネル利用を生かしたデザインとなっており、画像トリミングやクリップアート(画面上に配置するワンポイント)、文字列(フォントは数種類用意されているが、英文のみ)の位置を、指先やタッチペンなどでドラッグして任意の位置に配置できるなど、カーソルボタンで操作するよりもはるかに容易に利用できる。また、写真などに手描きの文字や線画を重ねて直感的に描画、手軽に印刷できるというのも、タッチパネル&スタイラス入力ならではの機能だ。