社会保険労務士 中谷充宏 ワタシとカイシャの深ーい溝 労働環境の危険な落とし穴 第3回
第3回 病気、怪我、失業……なんてよくある話 頼るべき労災保険と健康保険の使い分け
2007年03月07日 00時00分更新
昨今、ホワイトカラーエグゼンプションの問題などにより、被雇用者の就業形態に関心が高まっている。「残業代がでない」「定年年齢が延びる」など、うかうかしていると就業先の制度は次々変貌し、自分の身に襲いかかってくるかもしれないのだ。病気、けが、失業や老後に関わる労働保険や社会保険、自分の会社の制度をきちんと把握しておかなければ、自分の幸せを勝ち取ることはできない。“お仕事”にしか関心がないSEは危ないかも!?
たとえば通勤途中の怪我! 労災適用になるの?
今回は、皆さんが安心して働けるよう会社が加入している各種保険(労働保険・社会保険)制度について、お話したいと思います。 事故やケガ、病気、障害、失業、死亡などといったトラブルは、長年会社で仕事をしていく上で起らないとは言い切れません。もちろん、仕事以外においても体調を崩して長期入院、といったこともあるでしょう。こういった不慮の出来事について、国は労働者を保護する保険制度を整備しています。
たとえば、もし仕事上で事故に巻き込まれて傷病により療養する場合は、労働者災害補償保険いわゆる「労災保険」が使えます。治療費は全額労災保険から支給されますので、安心して治療に専念できます。 また、傷病の療養のため働くことができず、給与をもらえない時は、休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の80%相当額がもらえることになっています。実は、通勤中の事故にも、さまざまな条件(労災保険適用の条件)はあるものの、労災保険が適用になる場合もありますから、ぜひ覚えておくとよいでしょう。
失業という無給の危機 自己都合退職とリストラの差
会社が急に倒産した、会社からリストラを言い渡されたなどで、突然職を失うことも珍しくなくなりました。このような場合には、求職者給付いわゆる「失業保険」が使えます。失業保険の支給を受けることができる日数は、離職の日における年齢や被保険者であった期間、離職の理由などのさまざまな要素(失業保険適用の条件)により、支給の金額や日数が決まります。
倒産や会社の一方的な都合によるリストラなどは、ハローワークが失業と認定した日から約1週間で、指定した金融機関の預金口座に基本手当が振り込まれます。また、自らの意思で辞めた場合は、この失業認定日からの7日間に加えて3ヶ月の給付制限があり、つまり7日間+3ヶ月を経過してからが支給対象となるので注意しましょう。要は、自己都合退職だとなかなか失業保険はもらえないということです。
仕事以外でケガや病気になった時は?
前述の労災保険は業務災害及び通勤災害時にしか使えません。それでは、プライベートで風邪をひいたり、ケガをしたりしたらどうなるのでしょうか? この場合は、保険証を提示して診察を受ければ、健康保険から療養の給付といって医療費の一部を負担してもらえます。自己負担分は3割になっています。この給付に関しては、皆さんは身近でお世話になっているでしょう。
健康保険では、他にも給付金があります。最近活用事例で多いのものが、傷病手当金です。傷病手当金は、被保険者が病気やケガのために働くことができず、たとえば連続して4日以上勤めを休んでいる時に、標準報酬日額の6割に相当する額が4日目から支給されるものです。
最近、私の顧問先の従業員が「うつ病」となり、この支給申請をお手伝いしました。うつ病のような精神疾患は、病にかかってもなかなか労災は認められませんが、医師と事業主の証明さえあれば、この病気で会社を休んでいても傷病手当金はもらえます。
案外知らない労働保険・社会保険制度ですが、皆さんが安心して働き暮らせるよう手厚く保護されています。ただし、こういった情報を知らないで放置しておくと、もちろん何も手に入りません。とりあえず会社の総務や各保険機関等に相談してみることも大切でしょう。
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