既報のとおり、日本電気(株)(以下NEC)とNECパーソナルプロダクツ(株)、(株)日立製作所は30日、パソコン本体の騒音を従来比で1/3に低減するデスクトップパソコン向け“静音水冷システム”を共同開発したと発表した。CPUだけでなくHDDの冷却も行なえる。NECパーソナルプロダクツの2007年秋冬モデルでラインナップされる一体型デスクトップパソコンから採用される。
同日、東京都内にて開かれた記者説明会では、NECと日立の関係者による新水冷システムに関する説明とデモが行なわれた。日立はスーパーコンピューターの水冷システムで培ったノウハウを元に、2002年に水冷システムを内蔵したノートパソコンを発売している(関連記事)。またNECは日立からライセンス供与を受けて、2003年発売のデスクトップパソコンから水冷システムを採用している。今回共同開発された新水冷システムは、日立が“第4世代”と呼ぶ新しいシステムとなる。
新水冷システムの特徴のひとつは、世界初となるHDDを水冷で冷やす“HDD水冷ジャケット”の開発にある。NECではパソコン内の騒音源のひとつであるHDDの静音化のために、HDD全体を防振用のダンパーを備えたフレームで包み込むこと考案していたが、動作中のHDDは高温になるため、そのままではHDDが放熱できなくなってしまう。そこで水冷のHDDジャケットを熱伝導シートを介してHDDに貼り付けるように配置し、水冷ジャケットを含めた全体をフレームで包むことで、HDD動作時の騒音を大きく抑えることに成功したという。
また日立では第4世代水冷技術の開発に際して、複数の熱源を同時に冷やす“マルチヒートソース冷却”技術のほか、HDDやCPUを冷やす世界トップレベルの冷却性能を持つ水冷ジャケットの開発、応用分野の拡大などをテーマに開発を進めたという。特にCPUを冷やす水冷ジャケットについては、第3世代で導入された“マイクロチャネル”型のジャケットをより微細化(水の流れる隙間が0.15mmから0.09mmに)した新型を導入している。今回のシステムではCPUとHDDの2つのデバイスを水冷で冷やしているが、将来的には複数のCPUやグラフィックスチップの冷却も視野に入れているという。
NECによると、従来の水冷システム搭載デスクトップパソコンでは、CPUとHDDがフルに動作している場合の騒音がおおよそ32~34dB程度だったそうだ。それが新水冷システムを搭載したパソコンの場合は、22.4~24dB程度まで静音化できたという。NEC側では市販のDVDレコーダーと同等の25dBを目標に開発を進めたというが、結果的にはそれよりやや上回る程度まで静音化を実現できたことになる。
実際に、ヤマハ(株)の組み立て式防音室内に2007年1月発表の液晶ディスプレー一体型パソコン“VALUESTAR W”(空冷のみ)と、新水冷システムを搭載した一体型デスクトップパソコンを設置して騒音を聞き比べるデモを体験してみた。新水冷システムのパソコンに耳を近づけても、防音用のフードをかけられた背後の従来モデルの音の方が目立つほどで、動作音は静かを通り越してほとんど聞き取れないレベルまで静かになっていた。
ユニット自体も小型化が進んでいるほか、高価な銅をふんだんにつかっていた旧世代のシステムに比べて、部材コストも大きく削減されているように見える。NECでは新水冷システムを搭載した場合のコストについて、価格の約1割程度が水冷システム分のコストになるとの目安を示した。新水冷システムを搭載したパソコンの発売時期は明言されていないが、2007年秋冬モデルとのことなので、例年どおりであれば8月下旬から9月上旬頃には発表されるのではないかと予想される。