続いて長編部門の発表が行なわれた。上田知事より発表され、各賞ごとに審査委員長のメイベル・チャン(Mabel Cheung)監督(香港)をはじめ、審査委員を務めた映画評論家のペーター・ファン・ブエレン(Peter van Bueren)氏(オランダ)、脚本家のコールマン・ハフ(Coleman Hough)氏(アメリカ)、プロデューサーの森繁 晃氏よりトロフィーと副賞が手渡された。結果は以下の通り。
■長編部門(国際コンペティション)
- 最優秀作品賞/ソニーDシネマアワード
- “うつろいの季節(とき)” (2006年/トルコ・フランス/97分)
監督:ヌーリ・ビルゲ・ジェイラン(Nuri Bilge Ceylan)
ソニーDシネマアワード:トロフィー、副賞(賞金1000万円) - 新人監督賞※/ソニーDシネマアワード
- ネナド・ジューリッチ監督(“空からの贈りもの”/2006年/ボスニア・ヘルツェゴビナ/85分)
ソニーDシネマアワード:トロフィー、副賞(賞金200万円) - 脚本賞/ソニーDシネマアワード
- “月の子供たち”(2006年/ドイツ/87分)
監督:マヌエラ・シュタッケ
ソニーDシネマアワード:トロフィー、副賞(賞金100万円) - 技術賞/ソニーDシネマアワード
- “スカイマスター、空飛ぶ一家のおとぎ話”(2006年/デンマーク/83分)
監督:ミカエル・ウィケ、スティーン・ラスムセン
ソニーDシネマアワード:トロフィー、副賞(賞金100万円) - 審査員特別賞/ソニーDシネマアワード
- “ハートラインズ”(2006年/南アフリカ/96分)
監督:アンガス・ギブソン
ソニーDシネマアワード:トロフィー、副賞(賞金100万円)
※新人監督賞 劇場公開用長編が3本以下の監督
審査員特別賞を受賞したアンガス・ギブソン監督は、「私の口からは喜びの言葉しか出てきません。びっくりしています。南アフリカを描いて、南アフリカの人々のために作った作品が日本で受け入れられたのは、てとてもうれしいです」と語った。プレゼンターを務めたチャン監督は「この賞は選ぶのに最も時間がかかりました。私としてはアンガス監督に決まってとてもうれしいです」と語った。
続いて、技術賞を受賞したミカエル・ウィケ&スティーン・ラスムセン両監督が登壇すると、まるでコメディアンのような2人のおどけた振る舞いに、プレゼンターのブエレン氏までもが悪のりすると、緊張ぎみだった会場に爆笑が起こり、一気に座が和んだ。ウィケ監督は「初めての日本はとても楽しかったです。スタッフの方々に感謝を申しあげたいです。HDで撮影するのは初めてでしたが、CGI(Computer Generated Image、CG合成・制作した映像)の技術を使って、新たな可能性を示すことができたと思います」と語ると、ラスムセン監督は「ここに、川口に、日本にくることができたのがうれしかったです。また日本に戻って、みなさんの映画が撮りたいです。内容はこうです。デンマークのコックが日本にやって来て日本の寿司職人と対決をする話です。必ず日本に戻ってきます」と語った。ブエレン氏は「デジタル技術を、新鮮でクリエイティブに扱った。SKIPシティにプレッシャーをかける作品だと思います」と語った。
脚本賞を受賞した“月の子供たち”のカトリン・ミルハーン氏を代理してマヌエラ・シュタッケ監督が受け取った。シュタッケ監督は「この脚本は彼女のフィルムスクールでの卒業制作の作品なので彼女は大変喜んでくれると思います。ありがとうございます」と語った。プレゼンターのハフ氏は「この作品は人の心を探求した詩的な作品だと思います」と語った。
新人監督賞を受賞したネナド・ジューリッチ監督は不参加だったため、プロデューサーのアルミル・シャヒノビッチ氏が代理として受け取った。シャヒノビッチ氏は「スタッフをはじめ多くのみなさんに感謝しています。この映画祭はデジタル映画を作っている者にとって大変意義のあるものだと思います。監督にはちゃんとトロフィーは渡しますが、賞金は私がプロデューサーなので私が貰っておきます(笑)」と会場を沸かせた。プレゼンターの森繁氏は「私もシャヒノビッチさんと同じプロデューサーということで(笑)。今も何千人もの監督が出てきていますが、(いい作品を世に出すには)とにかく作り続けることだと思います」と語った。
そして、最優秀作品賞の“うつろいの季節(とき)”のヌーリ・ビルゲ・ジェイラン監督に代わって、出演俳優でジェイラン監督の20年来のパートナーというメフメット・エルユルマズ氏が挨拶し、「トルコや映画コミュニティを代表してお礼を申し上げます。監督には間違いなく伝えたいと思います。ありがとうございました」と語った。
最後に、審査委員長を務めたメイベル・チャン監督が総評した。「長編部門は世界のさまざまな文化を描いていて豊富だと思いました。その中でとりわけ目立っていたのが“うつろいの季節(とき)”でした。同作は満場一致で最優秀作品賞に決まりました。デジタルを駆使しながら、美しい詩的な表現で人の心を描いた作品だと思いました。映画祭の間中、本当に楽しみ、学習しました。感謝しています」と語った。
閉会に際して岡本市長が挨拶に立ち、「一映画ファンとしてさまざまな作品に出会えました。そして、映画は作る側と見る側があって、はじめて映画になると思いました。今回、昨年より1500人ほど多い6500人の方にご来場いただくことができました。上田知事とは10年、10回続けましょう、と言っていますが、10年続けたら、もっと続けたくなるだろうと思います。来年、またお会いしましょう」と締めくくった。
