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栗原潔の“エンタープライズ・コンピューティング新世紀”第7回

いまあえてWeb2.0を分析する(7)──なかなか有効なxxx 2.0の思考実験

2007年07月17日 21時00分更新

文● 栗原潔

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 初回にも書いたように、Web 2.0の定義は本質的にあいまいだ。Web 2.0が登場したてのころは、多くの人がTim O’ReillyのWeb 1.0とWeb 2.0の比較表を使ってWeb 2.0を説明していたようだ。以下のような表を覚えている方も多いだろう。なお、以下の表はTim O’Reillyの『What is Web 2.0 Design Pattern and Business Models for the Next Generation of Software』で提示された表に、筆者が「どこが違うのか」のコラムを追加したものである。・

Web 1.0 Web 2.0 どこが違うのか?
DoubleClick AdSense DoubleClickはヘッド狙い、AdSenseはテール狙い
Ofoto Flickr Ofotoはベンダー対コンシューマー、Flickrはコンシューマー対コンシューマー
Akamai BitTorrent Akamaiはヘッド狙い、BitTorrentはテール狙い
mp3.com Napster mp3.comはヘッド狙い、Napsterはテール狙い
ブリタニカ Wikipedia ブリタニカはプロが作る世界、Wikipediaはみんなが作る世界
個人ウェブ ブログ 個人ウェブは静的、ブログは動的
evite EVDB eviteはクローズド、EVDBはAPIを公開
ドメイン名投機 SEO ドメイン名投機は静的、SEOは動的
ページビュー コスト/クリック ページビューは静的、コスト/クリックは動的
画面スクレープ ウェブサービス 画面スクレープは間に合わせ、ウェブサービスはアーキテクチャー
出版 参加 出版はプロがやること、参加はみんなでやること
CMS Wiki CMSは特定のプロが作る、Wikiはみんなで作る
タクソノミー タグ タクソノミーはプロが作る世界、タグ(フォクソノミー)はみんなで作る世界
スティキネス シンジケーション 特定の場への囲い込みはWeb 1.0、場を広げていくのがWeb 2.0

 通常の広告代理店モデルをウェブで展開したとも言えるDoubleClickがWeb 1.0的であり、従来の広告代理店の営業の対象にはならなかった個人や小規模事業者に対してサーチエンジンベース自動化された広告配付手段を提供するGoogle AdSense(いわば広告のロングテールモデル)がWeb 2.0的というように説明していくのはとても分かりやすい。このような例を積み重ねていくと、もやっとしていたWeb 2.0の姿がよりクリアーになってくる。

 これは、いわば、演繹的な定義(「Web 2.0とはかくかくしかじかである」)ではなく、帰納的な定義(「このような事例がWeb 2.0的である」)により、Web 2.0を考えていこうということだ。現在進行中の複雑な現象を明確化するためには、演繹的な定義だけにこだわらず、帰納的な定義を積み重ねてみることも有効だろう。

 このような考え方のフレームワークは、さまざまなテクノロジーやプロセスのパラダイム・シフトの理解や説明を容易にするためにに応用できそうだ。例えば、筆者が愛読している米国の独立系コンサルタント・Dion Hinchcliffe氏のブログでは、製品開発におけるパラダイム・シフトをProduct Development 1.0とProduct Development 2.0とを具体的に比較することで示している(リンク)。

 同様な試みを筆者がKM(知識管理)について行なってみたのが以下の表だ。

KM 1.0 KM 2.0
Integrated Package Integrated Modules
タクソノミー タクソノミー+フォクソノミー
ノウハウ ノウハウ+ノウフー
情報の見える化 情報の価値の見える化
公式コンテンツ 集合知
社内コンテンツ 社内+社外コンテンツ
固定的ワークフロー 集合知ファシリテイター
独自リポジトリー XLMメタデータ
擬似リアルタイム(日・時間単位) ソフトリアルタイム(分・秒単位)
プル プッシュ+プル
オープンコミュニティー オープン+プライベートコミュニティー
非定型データ 非定型+定型データ
永続的保管 ライフサイクル
汎用 業界/ロール別

すべてのKMシステムがKM 2.0の要素を備えるべきだと言うわけではないが、将来のKMシステムが向かっている方向性がある程度クリアーになっているのではないだろうか? なお、この表はベンダー中立のリサーチとして作成したものなので、特定のベンダー名や製品名は入っていない。しかし、読者が社内でディスカッションを行なう場合には、具体的名称を入れてもよいだろう。

 xxx 2.0と言い回し自体は、マーケティング用語としてはそろそろ手垢がつき始めているかもしれない。とはいえ、1.0対2.0というフレームワークは今後もなかなか有効であるように思う。ERP 2.0、CRM 2.0、BI 2.0、セキュリティ 2.0、ソフトウェア開発 2.0といったようにトピックスはいろいろと考えられる。思考実験の対象としては最適ではないだろうか。

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