iTunes Plusの音質優位性は確実に存在する
さて、最後に改めてまとめておくと、128kbpsエンコードは16kHz以上がきちんと再生されないため、生楽器などが持っている高次倍音や、部屋鳴りなどの残響音が削られてしまう。結果として、妙に(変に)、生々しく聞こえたり、曲の艶が失われたりする。特に高品位なスピーカーで聴くとこれが顕著になる。音質にこだわるユーザーで、優れた再生環境をお持ちのユーザーには正直お勧めできない。
こういったこだわりのユーザーは、ぜひ256kbpsのiTunes Plus楽曲を購入して欲しい。WAVEとの差もかなり少ない。
128kbpsはiPodの特性を踏まえた選択だった?
ところがiPod+イヤフォン、またはポータブルスピーカーで再生するのが主目的の場合は、事情ががらりと一変する。別に128kbpsでもそれほど気にはならなくなるのだ。
もちろんクラシックやハイファイミュージックをよく聴けば差は分かるが、高品位スピーカーと比べて、ずいぶんと差は縮まる。J-Popに至っては重箱の隅をつつくような差異しか存在しない。これは音圧レベルが高く、シンセなどそれほど高次倍音を必要としない楽器をメインで使用していることが多いからと推測できる。
つまり、J-PopをiPod+イヤホン(あるいはポータブルスピーカー)で聴くユーザーにとって、256kbpsの必要性はそれほど高くないし、無理をして楽曲のアップグレードを行なう必然性も薄いと言える。「iPodがイヤホンで聴くのを前提に開発されている」こと。さらに「iTunes Storeはそのための楽曲を提供するもの」というそもそもの存在意義に立ち返れば、128kbps配信という選択はきわめて妥当なものであったと言えるだろう。
とはいえ、iPodとiTunes Storeは、その後メインストリームになり、高品質化を望む声も増えてきた。そういう一種のコアユーザー向けにDRMを廃し、圧縮ビットレートを向上させたiTunes Plusという選択肢を用意したことは、非常によいソリューションであると、結論付けられる。