C310は“Mio DigiWalker”シリーズのエントリーモデル。上位の「P350」や「Mio 168RS」とは異なり、機能を地図を中心とした3つに絞り込んでいる。OSはWindows CEだが、Pocket PCではないため、ユーザーがアプリケーションを追加して利用することもできない。ハンディーGPSに近いシンプルな操作性と価格の安さを主眼に置いた製品と言える。
ボタン類が側面にまとめられたため、シンプルなデザインとなった。上面はGPSアンテナの部分のみが盛り上がっているため、スペックのサイズ以上に本体は小さい印象がある。 |
GPS専用機だから、シンプルで使いやすい
CPUにARMベースのSamusung 2440-400MHzと3.5インチTFT液晶パネル(320×240ドット)を採用し、1GBの内蔵フラッシュメモリーに地図アプリケーションと地図データをプレインストールする点は、P350と共通。一方で、操作系はよりシンプルで、ボタン類も少なくなっている。
P350との大きな違いのひとつは、横向きでの使用が基本になる点だ。地図表示も回転機能はなく横位置固定となっている。
本体サイズは、P350よりも13mmほど長辺部分が短いものの、短辺や厚みは逆に増えている。それでも思いのほか小さく感じるのは、側面部にボタン類を集中させた、よりすっきりとしたデザインであるためだろう。側面に配置されたボタンは“電源”と“アプリケーション起動”ボタン、音量または地図縮尺の“アップ/ダウン”ボタンの4つだけ。操作のほとんどはタッチパネルで行なう。アプリケーションボタンはMP3プレーヤーなどに割り当てられる。
専用ボタンでダイレクトに地図を拡大/縮小できて便利
インストールされているアプリケーションは、地図(Mio Map)、音楽プレーヤー(MP3)、フォトビューアー(画像)の3種類で、これらは専用のランチャー(スタートアップ画面)に登録されている。機器の設定もここから呼び出す。
地図ソフトはMio DigiWalkerシリーズでは、おなじみの「Mio Map Ver.2.0」が搭載されている(バージョンはP350と同様の最新版)。ただし、P350とは異なり、詳細地図の「Pocket Mapple D」は搭載されていない。
Mio Mapの画面。大きめのアイコンによって指先だけで快適に操作できる。 | ルートナビ時には、地図上のガイドに加えて音声ガイダンスも流れる。動いている際は、安全のためメニュー操作が行なえない仕様となっている。 |
Mio Mapの機能自体はP350と変わっていない。メニュー内の設定画面や住所検索なども同一だ。 | スタートアップ画面(左上)。MP3プレイヤー(右上)。フォトビューアー画面(左下)。電池残量の確認画面(右下)。 |
Mio Mapの機能はP350とほぼ同等で、違いはPocket Mappleを呼び出して地図を切り替える機能がない程度だ。住所から目的地を指定する“ルート検索”、音声付きの“走行ナビゲーション”、ワンタッチでの“現在位置表示”なども可能だ。地図データは全国が網羅されているため、あとからユーザーがデータを追加する必要はないが、付属DVD-ROMに収録されたMio Mapをパソコンにインストールして、C310をUSB接続すれば、パソコンとC310の間で“地点登録”や“走行ルート”情報を同期できる。
地図のズームアップ/ダウンが専用ボタンで行なえる点は、P350より使いやすい。例えば地図を確認する際に、いったん広域表示にしてから目的とする地点をタップして画面の中心に表示させ、そこからズームアップしてより詳細な地図を見る……というよく使う動作が非常にやりやすくなった。
上面にはSDメモリーカードスロット、下面にはUSB端子とイヤフォン端子、主電源のスイッチがある。電源アダプターはUSB端子と共用だ。 | 右側面に集中した操作系。ラバーによって覆われているが、適度なクリック感があって押し応えはよい。 |
Mio Mapの画面はタッチパネルとなっており、スタイラスだけではなく指先で操作できるよう、アイコン類も大きくなっている。オートバイ用のグローブをした状態でも問題なく操作できた。側面にあるボタンも押し応えのあるスイッチになっており、カバンなどに収納した際に、誤って電源が入ってしまうといったトラブルが生じにくい。
一方、音楽プレーヤーとフォトビューアーは、地図ソフトと一緒に利用できないのが残念だ。また、1GBのフラッシュメモリーの大半が地図データで占められているためか、フォトストレージ機能(内蔵フラッシュメモリーの空き領域にSDメモリーカードの撮影データをコピーする機能)なども利用できない。
背面には大きめのスピーカーが配置されているため、音声ナビはかなり聞きやすい。モノラルということもあってMP3再生には物足りないものの、スピーカー内蔵の携帯オーディオが少ないことを考えれば、数人で音声/音楽を楽しむ場面で便利。スピーカーの上側にあるのは外付けGPSアンテナ用端子 |
カラーで4万円以下から買えるためハンディーGPS入門者に最適な1台
Mio 168RSやP350と同様に、アクセサリーが豊富なのも魅力的だ。C310には、付属品の異なる2種類のパッケージが用意されているが、そのうちの“F type”では、キャリングケースとストラップ、吸盤でダッシュボードに貼り付けてダッシュボード上で利用する車載スタンド、自転車のハンドルバーにマウントするアダプター、ACアダプターなどに加えて、車のシガーライターソケットからの給電できるアダプターや外付けGPSアンテナなどが付属する。
F typeには、車載用スタンド(写真内左上)や、シガーライターからの給電アダプター(同右上)など豊富なアクセサリーが付属する。右下のキャリングポーチはセミハードタイプのウレタン製。 | 自転車用マウントとブラケット(車載用と共用)で、自転車のハンドルバーに装着してみる。ブラケットへの装着は側面や上面のミゾに引っ掛けるタイプで外れにくい。 |
もう一方の“S type”は、キャリングケース、ACアダプター、ストラップ、USBケーブルなどアクセサリー類は最小限だが、価格は4万円弱とより安価になる。カラー表示のGPS専用機をより安価に入手したいというのならS type。車やバイク、自転車で使うための専用スタンドやブラケットが必要ならF typeという選択になるだろう。筆者としては、S typeと約5000円の価格差で、汎用品ではなく専用のブラケット類が入手できるS typeのほうが、よりお買い得感が高いと感じた。
自転車やオートバイで使用するハンディーGPSには、他社製品を含めていくつかの選択肢がある。しかし、登山などアウトドア用品としてではなく、まずPDAにGPS機能を付け、さらにそれを専用端末化するというのは、これまでにない流れだ。
車載専用に考えれば、本格的なカーナビ製品には機能でかなわないし、アウトドア用機器に比べると約3.5時間と連続動作時間が物足りないなど、不満点もあるのだが、ドライブやツーリング、街歩きなどで気軽に携帯でき、GPSと電子地図の恩恵を受けられるのは嬉しい。各種オプションが付属しないモデルなら、4万円を切る。カラー地図が表示できるGPS機器としては破格に安い価格設定も魅力だろう。
(S type:3万9800円、F type:4万4800円)