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松岡美樹の“ネットメディアの心理学” 第7回

iTunesの仕様に疑問をもつヤツはいないのか?〈後編〉

2007年06月27日 00時00分更新

文● 松岡美樹、イラスト●さとうゆり

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 前回の記事では『Windows Media Player』と『iTunes』を比較し、仕様がかなり違うと書いた。WMPは音楽をアルバム単位で聴きやすい。一方、iTunesはアルバムを頭から通して聴こうとすると、ひどく不便な場合があると書いた。

 それはいったいなぜなのか? 今回の話はここから始まる。



古きよきアルバムトータルコンセプトか、新世代の単曲リスニングか


 実はこれってどっちがいい悪いの問題じゃない。それぞれがターゲットにしているユーザ層のライフスタイルと、寄って立つ企業戦略がちがうのだ。いや私の想像ではあるが。 

 ひとことでいえばWMPは、古き良き“アルバム・トータルコンセプト主義”に対応している。かたやiTunesは、音楽配信時代の“単曲リスニング志向”にもとづいているように見える。

 私みたいなおっさんがロックを聴き始めたころ。例えばローリング・ストーンズの『Sticky Fingers』(1971年)のレコード・ジャケットをなで回してはニヤついていた。好きなバンドのアルバム・ジャケットを触るだけでシアワセだった。

 特にSticky Fingersのジャケットはアンディ・ウォーホール作であり、ジーンズの写真のまんなかには本物のファスナーがついていた。あのズボンのチャックを上げたり下ろしたりするのがうれしい……その行為こそがすなわち、Sticky Fingersを聴くこととイコールだった。

 そこではレコード盤という固形物を所有するのが、ローリング・ストーンズを聴くことの一部でありえた。棚に収納するのはもちろんアルバム単位、音楽を聴くのもアルバムごとである。

 それだけじゃない。ミュージシャンはアルバム単位で作品を世に出してるんだから、彼らを崇拝する自分も同じようにアルバム・レベルで音楽を聴きたい、てな思い入れもあった。

 そんな価値観の私(の世代)にとっては、たぶんiTunesよりWMPのほうが使いやすいのだろう。

 かたや音楽を聴き始めたときにはすでに楽曲配信が存在し、好きな音楽を曲単位で買ったり聴いたりする人にはiTunesがぴったりくる。もちろんiTunesは音楽配信という自社の事業を推進/定着させる一翼をになっているわけだから、それ(単曲リスニング)向きの仕様になっている。

 こういうことじゃないだろうか。

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