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松岡美樹の“ネットメディアの心理学” 第6回

iTunesの仕様に疑問をもつヤツはいないのか?〈前編〉

2007年06月23日 01時30分更新

文● 松岡美樹、イラスト●さとうゆり

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常に膨大なアルバムの中から探さないといけないのか……


 ではこの2枚組アンソロジーの場合、アルバム全体を通して聴くためにはどうすればいいのか? 

 上のように、まず画面中央の“アーティスト”ゾーンでいったん最上段まで移動し、“すべて”を選択する。すると右側の“アルバム”ゾーンに、Disc 1とDisc 2がようやく並んで表示される。この状態でDisc 1をクリックするのだ。

 すると今度はさっきみたいに1曲だけじゃなく、Disc 1に収録されているすべての曲が画面の下半分にお出ましになる。

 だがこのとき右側の“アルバム”ゾーンには、いろんなアーティストの膨大な数のアルバム名が入り乱れて表示されている。アーティスト名でアルバムを絞り込んでないから当然だ。ゆえに聴きたいアルバムの名称を、正確に暗記しておかなきゃならない。

「えーと、あのアルバムの名前はなんだっけ?」なーんて状態じゃ、お目当てのアルバムを探し出して聴くことができないのだ。

 なぜこんな不便な事態になるのか? それはこの場合、アーティスト名の下の階層にアルバム名があり、さらにその下に曲名がある、という3段階の階層構造になっていないからだ。探す手順はあくまで、すべて(のアーティスト)⇒アルバム名曲名である。

 だから気が遠くなるような数のアルバム名が羅列されたリストの中から、いきなり聴きたいアルバムを探すハメになってしまうのだ。

 もちろんこの現象は、Duan Allmanだけに起こる特異な例じゃない。

 アレサ・フランクリンの『AMAZING GRACE』も、アーティスト名からたどると悲惨なことになる。アルバム収録曲がバラバラになり、一部しか表示されない。ボブ・ディランの『LIVE 1975』もそうだ。同じ例は挙げればいくらでもある。まったく、なんだかなあである。



Windows Media Playerを使えば、問題は解決する?


 ところが、だ。かたやマイクロソフト謹製の『Windows Media Player』では、こうはならないのである。

 例えばさっき例に挙げたDuane Allmanのアンソロジーの場合はどうか? Windows Media PlayerでDuane Allmanという“アーティスト名”を選択すると、下のような画面になる。

 左上の“アルバム アーティスト”ツリーにある“Duane Allmanの下の階層には、Disc 1、Disc 2がきちんと両方表示されている。このうちDisc 1を選択すると、図のようにDisc 1に収録されているすべての楽曲をワンタッチで再生できる。(できて当然だと思うが)

 これならアルバム名がうろ覚えでも、まずアーティスト名からたどって目的のアルバムをカンタンに聴くことができる。

 いちいち曲を検索し、探す必要もない。ほとんど頭を使わず、次々にクリックしていくだけだ。操作法や機能を熟知していなくても、直感的・体感的に画面を操れる(少なくとも私はそう感じる)。

 なぜこんな当たり前のことがWindows Media Playerではできて、iTunesではすんなりできないのか?

 いや私は別にマイクロソフトからワイロをもらってこの原稿を書いてるわけじゃない。「越後屋、そちもワルよのぅ」てなことではぜんぜんない。なぜこんな当然のことができないのか、素朴な疑問を感じるだけだ。

 で、ない頭を使ってちょっと考えてみた。WMPとiTunesのこのギャップはどこからくるのか? すると実はこれってどっちがいい悪いの問題じゃなく、それぞれがターゲットにしているユーザ層のライフスタイルと、寄って立つ企業戦略のちがいじゃないか? と思えてきた。

(続きは、6月27日ごろ掲載の後編でお読みください)


松岡美樹(まつおかみき)

新聞、出版社を経てフリーランスのライター。ブロードバンド・ニュースサイトの“RBB TODAY”や、アスキーなどに連載・寄稿している。著書に『ニッポンの挑戦 インターネットの夜明け』(RBB PRESS/オーム社)などがある。自身のブログ“すちゃらかな日常 松岡美樹”も運営している。

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