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YouTubeは使ってこそ意味がある

へるもんじゃないので、どんどん上げよう〈コラム〉

2007年06月20日 22時25分更新

文● 小林 久(編集部)

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 日本を含む9ヵ国向けにローカライズされた“YouTube”のサービスが19日にスタートした(関連記事)。

YouTubeの日本語サイト

YouTubeの日本語サイト

 個人的に気になるのは、日本語版のサービスが用意されることで、YouTubeに何が起こるのか、ということだ。すでに国内でも人気を博しているYouTubeが、日本語で利用できるようになれば、確かにユーザー層は拡大しそうだ。ニュースリリースでYouTubeが述べているように

「各国のユーザーが自分の言語でつくった動画を共有したり、国内での動画のランキングを楽しんだり、同じ地域のユーザーとつながりやすくなると考えています」

 といった、状況が生まれる可能性も十分にある。



日本語化して、うれしいか?


 とはいえ、ユーザーの立場で考えてみると、英語版のサービスが日本語になることで、何かが大きく変わるのかと言えば、あまりないように感じる。これまでも日本語の表示自体には特に問題はなかったし、日本のユーザーのほとんどが、米国のサービスであることを意識せずにYouTubeを利用してきたはずである。

 この話を聞いて個人的に関心を持ったのは、今まで複雑な関係にあった国内のコンテンツホルダーとYouTubeとの間の距離が果たして縮まるのかどうかである。ローカライズの発表はあるいは「各国のコンテンツホルダーとの間に何らかの力学が働いた結果なのではないか」という邪推が筆者の頭をよぎった。

 YouTubeと言えば、日本では著作権侵害の温床的な見方もされているが、それはあまりに一面的な見方だと思う。海外では、すでに放送局などが、YouTubeをプロモーションのツールとして利用する例が出てきているが、メディアとしてはこういうものは利用しない手はないだろう。良質なコンテンツをこういったリーチの広いメディアに載せてしまえば、口コミでどんどんネット上の評判が上がっていくのだから、あとはトラフィックを物販に結びつけるなり、アフィリエイトで稼ぐなり、いくらでも料理のしようがあるわけである。



グローバルじゃないほうが嬉しいことがある


 いいものを埋もれさせてもいいことはなにもないのだ。コンテンツの露出を高められる手段はどんどん利用した方がいいと筆者は考えている。

 しかもYouTubeは、パソコンだけでなく、ケータイやゲーム機やなどネットにつながるありとあらゆる機器にサービスを提供しようとしているのである。その潜在的な影響力には目を見張るものがある。

 彼らがこれから狙っていくのは、放送局を始めとしたコンテンツパートナーから商用コンテンツの配信を受け、ビジネスの拡大を図るというアプローチだろう。YouTubeのコミュニティー自体の価値を高めて、サイト自体の広告収入などを得るというビジネスも視野には入れているだろうが、それよりも重要なのはコンテンツパートナーが自社の持つコンテンツをアップロードしやすい環境を作ることだと、YouTubeは考えたのかもしれない。

 パートナーシップを築く上で、なぜローカル化が必要になるかという理由には、ぱっと思いつくだけで2点あるように思う。

 まずは国ごとに内容が異なる著作権法に対して、細やかに対応できる体制を作ること。これまでも日本のコンテンツホルダーは、テレビ番組などが無断で投稿されてしまう状態を改善するよう、YouTubeに対して厳しい姿勢を採ってきた。YouTubeは、申請を受けた動画を削除するといった対応を取ってきたが、あくまでも海外の企業によるサービスであり、サーバーも国外に設置されている。日本の著作権法に照らし合わせた対応を迅速に求めていくのは難しい面があった。

 もうひとつは、放送局にとって、グローバルに配信できるプラットフォームというのは必ずしも使いやすくはないということだ。一例としては、放映権の問題がある。例えば、スポーツ中継などでは、放映をしていい地域や期間に関してかなり厳密な契約が必要だと聞く。ある放送局が日本での放映権を獲得して、YouTubeにアップロードしたいと考えているが、それが全世界で見られてしまっては困るといった状況も生じるだろう。

 地域を限定したコンテンツ提供に関しては、これまでもDVDのリージョンコードの例や、iTunes Storeのように国ごとに提供されているコンテンツが異なる例などがあった。ローカライズにより、これに似たニーズに対応できる仕組みを用意したとは考えられないだろうか?

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