パソコンを使ったビジネスが中国では深く根付いている
中国では香港にはないパソコンを使ったさまざまな商売がある。例えば、ビジネスセンター的な個人商店だろう。
そこではプリントアウトのほか、MP3ファイルのダウンロードなんてサービスもある。海賊版とは関係ないが、ビジネスセンターでは有人によるコピー(印刷)サービスもある。
コピーサービス用には、日本から輸入した中古のコピー機が置かれており、中国人の店員が、モノクロディスプレーに表示される日本語には目もくれず、操作している姿が印象的だ。パソコンで作成したデータの印刷だから、当然Microsoft Officeの文書を読めるパソコンが必要になる。出力するだけなら、Word Readerなり、Excel Readerなりを使う手もありそうだが、中国のその種の店では、Officeそのものが入っていることが一般的だ。
また写真の現像屋でも、WindowsやPhotoshopが利用されているし、日本同様に印鑑がビジネスに必須な中国では、“PCゴム印作成屋”という商売もある。さらにはカラオケにも、スーパーのPOSにも、公衆IP電話サービスにもパソコンが利用されている。
そして忘れてはならないのはネットカフェだ。いずれのサービスにしろ、“先進国価格”のソフトウェアを正規に導入していたら、とてもビジネスにならなそうな激安価格でサービスを提供している。おそらく、どのサービスでも海賊版を利用しているのだろう。
つまり、どこにでもある生活に根付いたサービスが海賊版ソフトウェアによって支えられているため、海賊版撲滅のメスを社会のすみずみまで入れることは難しそうだ。
中国ならではのビジネスモデルの普及が海賊版問題を変える?
もちろん、どんなビジネスシーンにおいても正規版利用が不可能、というわけではない。大企業や政府など、体力のある組織は正規版を購入することは可能だ。そこから海賊版を撲滅すれば、一般市民の不便を強いることなく海賊版利用率を減少させることはできるだろう。
音楽・映像コンテンツの海賊版コンテンツは、MP3プレーヤーやMP4プレーヤーの普及を機に、ネット経由で得ることが、一気に当たり前となった。ネットでこれらコンテンツをダウンロードするために、P2Pもこれまた一気に普及した。
中国政府は「映像作品、音楽作品など海賊版コンテンツをアップロードするのは禁止」という法律を作っていはいるが、百度のMP3ファイル検索サービスなど、きわどいサービスはもちろん、違法と認められた海賊版コンテンツのアップロードも少なくなる気配はない。
音楽・映像コンテンツについては、EMIグループが百度のサイト上に無料のコンテンツを提供するなど、近年海外のコンテンツベンダーが中国市場で独特の展開をしつつある。今後コンテンツベンダーが中国向けのコンテンツ提供戦略を行なえば、海賊版利用率はある程度は減らせる可能性はある。