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「東京ミッドタウンは世界初のユビキタス・シティーだ」と坂村氏

東京ミッドタウン、携帯情報端末を利用したアート作品のガイドツアーを開始

2007年06月12日 20時42分更新

文● 編集部 若林健太

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東京ミッドタウンマネジメント(株)は12日、東京・六本木の東京ミッドタウン・ホールに報道関係者を集め、東京ミッドタウン内に設置されたアート作品の説明を携帯情報端末によって行なうサービス“ユビキタス・アートツアー”を13日に開始すると発表した。有料サービスとなっており、料金は1回につき500円で、別途保証金として500円が必要(保証金は端末を返却すれば戻ってくる)。サービスの利用申込は東京ミッドタウンの公式ウェブサイト(http://www.tokyo-midtown.com/)、電話窓口(03-3475-3290)、および現地のツアーカウンターで行ない、ウェブサイトでは本日から予約受け付けを開始している(ASCII.JP ムービーフラッシュによる動画1:“ユビキタス・アートツアー”の内容紹介ビデオ)。

ユビキタス・コミュニケータ

携帯情報端末“ユビキタス・コミュニケータ”で“ユビキタス・アートツアー”を利用している様子

ユビキタス・アートツアーは、東京ミッドタウン内に配置されたアート作品(さまざまな芸術家によって作られたオブジェや建築物など)の解説を、携帯情報端末“ユビキタス・コミュニケータ”によって行なうサービス。ユビキタス・コミュニケータを持ってアート作品のそばに行くと、テキストと音声(コンピューターによる合成音声)での作品概要の説明が自動的に同端末に表示される。さらに端末のメニュー操作を行なえば、作者の紹介や、制作風景を撮影した動画などを表示させることも可能だ。同サービスには“120分フルコース”、“30分ハイライトコース”、“雨の日コース”など7つのコースが用意されており、各コースごとに決められた順序でアートを見て回ることになるが、ユビキタス・コミュニケータは次の作品がある場所への経路を音声や地図表示によってガイドする機能も備えている。なお、音声やテキストは日本語/英語/フランス語/中国語/韓国語の5ヵ国語に切り替え可能だ。

ユビキタス・コミュニケータは、今年3月まで東京・銀座で行なわれていた東京都の実証実験“東京ユビキタス計画・銀座”(関連記事1関連記事2)と同じものが使われている(ただしソフトウェアは東京ミッドタウンに最適化された新しいソフトが使用されている)。地下通路の天井や外灯などに設置されたICタグ、赤外線マーカー、無線マーカーなどの“ucodeマーカ”から固体識別番号“ucode”を取得し、それぞれの場所で表示される情報が切り替わるという仕組みも東京ユビキタス計画・銀座で使われていたものと同様だ。今回のサービスでは、ucodeマーカとユビキタス・コミュニケータの通信には赤外線通信と429MHzの特定小電力無線を利用しているという。ただし、ucodeマーカから発信されるのはucodeのみで、表示されるテキスト・音声・動画などはユビキタス・コミュニケータに内蔵されたSDメモリーカードに収められているASCII.JP ムービーフラッシュによる動画2:“ユビキタス・アートツアー”のデモの模様)。

ucodeマーカ

地下通路の天井に設置されたucodeマーカ

ucodeマーカ

外灯に設置されたucodeマーカ。東京ミッドタウンにはこのようなucodeマーカが約500個設置されている

記者発表会には三井不動産(株)の執行役員 東京ミッドタウン事業部長の市川俊英(いちかわとしひで)氏、東京ミッドタウン事業部 事業グループグループ長の山本隆志(やまもとたかし)氏のほか、東京大学教授でYRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長の坂村 健(さかむらけん)氏の計3名が出席。うち、市川氏と坂村氏が発言を行なった。

「将来的には店舗情報の配信や共同施設への誘導も行なう」

市川俊英氏

三井不動産 執行役員 東京ミッドタウン事業部長の市川俊英氏

初めに市川氏が登壇し、ユビキタス・アートツアーの概要について語った。市川氏は同サービスの趣旨について触れ、「東京ミッドタウンの開発に当たって推進してきたコンセプト“ジャパンバリュー”の観点から、また独自の高い付加価値を提供するというポイントから、さまざまな企画を検討・実施してきた。ユビキタス・アートツアーはその一環として行なうもので、世界最先端のユビキタス技術を利用して、ミッドタウンを訪れる方々にさまざまな情報やサービスを提供できないか、と考えた」とした。

また、市川氏は「ミッドタウンでは将来的なユビキタスの利用を見据えて、約500ヵ所にucodeマーカを設置している。今後、店舗ごとの情報やサービス情報をお客さまに提供したり、トイレなどの共同施設へ誘導するなど、発展的・継続的な利用を行なっていきたいと考えている」と述べ、ユビキタス・アートツアー以外の用途でもucodeマーカの利用を示唆した。

「ユビキタス・コミュニケータは10年後の携帯電話機」

坂村 健氏

ユビキタス・コミュニケータを手に語る坂村 健氏

続いて坂村氏が登壇し、ユビキタス・アートツアーのシステムについて概要を説明した。坂村氏はその中で、このシステムは東京ユビキタス計画と同じ技術を使った“都市インフラ”であるとして、「インフラであるということは、アートツアーのためだけのものではなく、ほかにもいろいろなことに利用できる。私はそこがポイントだと考えている」と強調した。また、「東京ミッドタウンでは施工時から外灯や天井、エレベーターホールなどにucodeマーカを組み込んでおり、(後からマーカを設置するよりも)きれいに収まっている。その意味で東京ミッドタウンは世界初の“ユビキタス・シティー”だと宣言してもいいと思っている」と語った。

さらに、坂村氏はユビキタス・コミュニケータについても触れ、「携帯電話機を使ったほうがいいんじゃないかと言われることもあるが、多国語対応や動画の頻繁な再生など、これと同じことを今の携帯電話機でやろうと思ったら通信費の問題もあり大変。ただ、携帯電話機も進化しているため、10年経てば携帯電話機もこうなる。これを使っていただくということは、10年後の携帯電話機を先取りしていただくということだ」とアピールした。

東京ミッドタウンの各所に配置されたアート群。ユビキタス・アートツアーを利用すれば、これらの名称や作者、作品に込められた意味などが分かる

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