このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

<シリーズ>「日本版SOX法後」の業務はどう変わるのか(4)

「『正直に・正確に・正式に』を心がけよう」――公認不正検査士の戸村智憲氏

2007年06月04日 13時19分更新

文● 江頭紀子

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

現場にも大きな影響を与える「日本版SOX法」や「内部統制」。だが、「難しくてよく分からない」という声は相変わらず根強い。「シリーズ・日本版SOX法後の業務はどう変わるのか」第4回は、社員研修などの活動を通じて現場への内部統制の浸透を訴える公認不正検査士の戸村智憲氏に、現場における心構えを分かりやすく解説してもらった。

日本マネジメント総合研究所理事長 戸村智憲氏

日本マネジメント総合研究所理事長 戸村智憲氏


ハンコひとつ・ペン1本・領収書1枚……身近なところにある「内部統制」


「内部統制は、『企業の不正や不祥事をなくす活動』と捉えがちだが、真の目的は『“企業の不正や不祥事をなくす活動”を通じて“企業価値を向上させる”』こと。それなのに、現場には陰湿なイメージを持ちやすい前半部分しか伝わっていない」――。日本マネジメント総合研究所理事長・公認不正検査士の戸村智憲氏はこう指摘する。

 日本版SOX法は、『財務報告に係る内部統制』に照準を絞ったものだが、それを踏まえた全社的・全般的な内部統制の充実こそが企業の競争優位の源泉になる、というのが戸村氏の主張だ。

「本来の目的からすると、内部統制は財務や総務、コンプライアンス室、監査の担当者など、一部が対応すればいいというものではないはず。会社にいる非正規社員を含む全員に関係することだ」(戸村氏)

 では、従業員全員に関係する内部統制の整備とはどういうことなのか。氏は、身近な例を用いて説明する。

 たとえば、部下が提出した書類の中身を確かめずにハンコを押したり、部下にハンコを預けて押させること。あるいは、会社で支給されるペンを自宅用に持ち帰ったり、私用の飲食費を経費で落したりするといったこと。これらはついやってしまいそうな不正だが、すべて内部統制に関係していることであり、たとえハンコひとつでもペン1本でも内部統制上は問題とされてしまう行為なのだ。

「会社のことも自分のことのように考えてみてほしい。たとえば個人の大事な通帳やハンコを、簡単に他人に預けたりするだろうか? それなのに、会社の決裁印は簡単に申請書を出す側の部下に預けて代わりに押印させてしまう企業が散見される」(戸村氏)。こうした普段1人ひとりが会社で行なっていることが本当に正しいことなのか、1つひとつ見直していくこと。それが、現場の誰もが取り組むべき内部統制の具体的な活動となるのだという。


【次ページ】現場は内部統制にどう臨むべきか?


前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード