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インテル、“モバイルWiMAX”への取り組みや規格化の現状について説明

2007年06月01日 18時51分更新

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インテル(株)は1日、来日中の米インテル社でWiMAX関連を担当する技術責任者やWiMAXの推進団体“WiMAXフォーラム”代表らを招き、モバイルWiMAX(以下WiMAX)への同社の取り組みと現状についての記者説明会を開催した。

シアバッシュ・アラムーチ氏

WiMAXの試作チップを掲げるインテル・フェロー兼米インテル モバイル・ワイヤレス事業部CTOのシアバッシュ・アラムーチ氏(中央)

同社代表取締役共同社長の吉田和正氏は、会の冒頭の挨拶でインテルによるWiMAXへの積極的な取り組みが2002年に始まったことを述べた。吉田氏やインテルのWiMAXへの取り組みを説明したインテル・フェロー兼米インテル モバイル・ワイヤレス事業部CTOのシアバッシュ・アラムーチ(Siavash M. Alamouti)氏は、同社が長期間に渡ってWiMAXに取り組んでいる理由について、モバイル・インターネットの重要性を挙げている。アラムーチ氏は消費者が“いつでもどこでもインターネットを使えること”を望んでいる一方で、それを実現するユビキタスなインターネット接続性はいまだ実現されていないとした。それを実現するものが、すでに普及しているWiFi(IEEE 802.11系無線LAN)とWiMAXであるというわけだ。

さらにアラムーチ氏は、「モバイル・インターネットの主役は小型のパソコン」であり、「大型のハンドセットではない」とも述べた。インターネットの各種サービスやアプリケーションは、いずれもパソコンとそのOS向けに作られたものばかりであり、OSが何であったとしても、これらのアプリケーションを利用するにはパソコンの能力が必要であるというのがその論拠である。アラムーチ氏はモバイル・インターネットに適した新しいモバイルパソコンの必要性にも言及したが、これを実現するプラットフォームが、北京で開かれた“IDF 2007”で発表された“インテル ウルトラ・モバイル・プラットフォーム 2007”(関連記事)や、その次世代版である“Menlow”(メンロウ)であろう。

WiMAXの主役はスマートフォンではなく、あくまでも小型パソコンであるとインテルは唱える

WiMAXの主役はスマートフォンではなく、あくまでも小型パソコンであるとインテルは唱える。インターネットのサービスやアプリケーションは、パソコンの能力を必要としているためという

台湾HTC社製の“インテル ウルトラ・モバイル・プラットフォーム 2007”ベースUMPC

インテルがIDF 2007北京で発表した、台湾HTC社製の“インテル ウルトラ・モバイル・プラットフォーム 2007”ベースUMPC。インテルの描くWiMAX対応端末に、現状では最も近いものか

また、アラムーチ氏はモバイル・インターネットに必要な要素として、低価格な機器(パソコンと無線モデム)と適切な料金設定を挙げている。通信速度についても言及し、1ユーザー当たり下り方向1Mbps、上り方向200kbpsが、アプリケーションやサービスに対応するために必要な目安としている。そのほかにも、いつでもどこでもつながるサービス提供や、使いやすいユーザーインターフェースも必要であるとしている。

WiMAXには広域高速無線通信という面で、3G携帯電話などの競合技術も存在する。インテル・フェローとしてWiMAXの技術面にも通じたアラムーチ氏は、移動体通信としてのWiMAX(モバイルWiMAXと称する)の競合技術に対する利点として、“OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多重接続)”と呼ばれる通信方式の利点(周波数利用効率の高さ)と、MIMO技術への親和性の高さ(MIMO-CDMAと比べて受信機が低コストで作れる)などを挙げている。また、“4G”と呼ばれる次世代の移動体通信規格にも、WiMAXのOFDM技術を元にした進化形の規格(IEEE 802.16mとして規格化中)が使われるとの見方を示した。

既存の有線・無線通信技術とWiMAXのデータレート比較

既存の有線・無線通信技術とWiMAXのデータレート比較。実効値が理論値の20~30%とすると、WiMAXなら14~21.6Mbps近いデータレートが得られることになる

既存の携帯電話系データ通信規格と、WiMAXの速度や周波数効率の比較

既存の携帯電話系データ通信規格と、WiMAXの速度や周波数効率の比較。下り方向ではWiMAXが圧倒的に優れる

WiMAXフォーラム代表兼会長のロン・レズニック(Ron Resnick)氏は、WiMAXの現状や各国での展開を主に語った。レズニック氏はまず、「WiMAXは携帯電話(音声通話)を代替するものではない。IPパケットベースの技術であり、3Gデータサービスを補完するものである」と、誤解されがちなWiMAXのコンセプトについて説明した。

日本でのWiMAXの標準化や周波数割り当ての進行状況

日本でのWiMAXの標準化や周波数割り当ての進行状況。具体的な事業化に向けて着実に前進している

日本でWiMAXに割り当てられた2.5GHz帯の周波数割り当て図

日本でWiMAXに割り当てられた2.5GHz帯の周波数割り当て図。基本的に赤い部分が通信事業者に割り当てられる帯域

レズニック氏の講演は多岐に渡ったが、特に興味深いのは日本を含めた各国での状況に関する話題である。レズニック氏は日本での法整備について触れ、総務省が5月15日に発表したWiMAX向けの2.5GHz帯(2535~2630MHz)の通信事業者に対する割り当て案について、既存の大手3G携帯電話事業者(すなわち(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ、KDDI(株)、ソフトバンクモバイル(株))以外に割り当てるという点を「驚くべき決定」と述べた。その後の質疑応答ではこの点について、新規事業者の参入機会を増やして競争を促進するとして、「個人的にはいい条件、非常によい決定である」との見解を示した。2007年第3四半期には周波数を使用する免許が交付され、インフラの整備が始まるとした。ただし周波数割り当てから事業化にかけて、日本は米/韓/台湾などより遅れをとっているとも指摘している。

世界でのWiMAX向け周波数割り当て状況。2.5GHz帯は中東を除くほとんどの地域で割り当てられる。5.8GHzも同様に広い地域で使えるが、日本では今のところ割り当てられていない

日本が2.5GHz帯をWiMAX向けに割り当てた点も好意的に評価した。レズニック氏は、WiMAXフォーラムが“グローバル・ローミング・ワーキンググループ”を設けて、世界のどこでも同じ機器が使えるようにする努力を当初から行なっている点を説明。そのうえで、世界各地でWiMAX向けに割り当てられる2.5GHz帯を日本でも使えるようになったことで、WiMAXを利用したアプリケーション(例えばVoIP)を、日本製品を持つユーザーが世界各地で使えるようになると好意的に評価した。

そのほかには、WiMAXに関する知的財産権にも言及した。レズニック氏はWiMAXについては330社が1550もの特許(米国特許)を分散して所有しているため、1社が関連する知財を独占することによる害は生じないとした。一方で、多数の企業が持つ関連特許をまとめて管理する“パテントプール”の仕組みをWiMAXに導入するかとの質問に対しては、フォーラムとしては用意するつもりはないものの、各企業がパテントプールの設立に向けて動く場合は、フォーラムとしてサポートしたいとの考えを示した。

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