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冨田 勲氏「無我夢中でやってきた」

ローランド、第1回“エレクトロニクス・アーツ浜松賞”を冨田 勲氏に授与

2007年05月29日 15時23分更新

文● 編集部 永水和久

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(財)ローランド芸術文化振興財団は25日、東京のザ・プリンス パークタワー東京で記者発表会を開催し、第1回“エレクトロニクス・アーツ浜松賞”を作曲家の冨田 勲(とみた いさお)氏に授与したと発表した。冨田氏には、顕彰金として300万円が贈与される。

エレクトロニクス・アーツ浜松賞は、同財団が、電子楽器演奏および、音楽制作における先駆的貢献と、電子音楽分野の確立に貢献したアーティストを表彰していくために設けた顕彰制度。今回の表彰は第1回目となり、今後は毎年受賞者を選考するとしている。また、顕彰制度としても、同財団では初の実施となる。

理事長の梯 郁太郎氏

理事長の梯 郁太郎氏

同財団の理事長の梯 郁太郎(かけはし いくたろう)氏が、この顕彰制度を設けた理由について、「どの分野でもヒーローがいるもの。そのヒーローを表彰したかった。そしてこの表彰は、その分野を目指す人間の励みになる」と説明した。

加えて、この賞については、「これはインターナショナルなアワードである。日本での活躍に限って表彰するものではない。電子楽器の分野において、現役で世界的に活躍する方を選ぶもの」と位置づけを述べた。

今回の受賞者である冨田 勲氏については、「冨田さんの紹介は難しい。メディアを超えた音を創る。最近では、冨田さんと出演者だけの、聴衆のいないコンサートを企画された。これは音楽史の記録に残るものだ」と語った。

冨田 勲氏

冨田 勲氏

続けて、記念すべき第1回目の受賞者となった冨田氏が、自身にとっての電子楽器について、「音色が決まっているアコースティック楽器と違い、音色から作成できるシンセサイザーでの作曲にのめり込んだ。電気は心臓を動かすものであり、自然現象の雷でもある。その意味で私には電子楽器とアコースティック楽器の区別がつかない」と説明した。

加えて、今回の賞を授与されたことについては、「目標が正しいのか分からないまま、無我夢中でやってきた。ローランドさんに賞をもらって振り返ってみると、間違ってはいなかったのではないかと思えてきた」と心境を述べた。

クリスタル製の盾を持つ冨田 勲氏

クリスタル製の盾を持つ冨田 勲氏

冨田氏は、1932年生まれ。1950年代前半から放送、舞台、映画、コマーシャルなどの分野で作曲家・編曲家として活動し、現在も現役を続けている。1974年に発表した、全編シンセサイザーによる作品『月の光-ドビュッシーによるメルヘンの世界』が、米ビルボード(Billboard)誌のクラシックチャートで第1位を獲得。これを機に、その活動を世界に広げる。冨田氏のシンセサイザーを使った作品は、そのすべての音色や演奏、録音を冨田氏自身で行なっており、現在主流となるパーソナルスタジオでの音楽製作の先掛けとなる一面も持つ。1984年から現在も現役で、野外での立体音響コンサート“トミタ・サウンドクラウド”を世界各地で開催している。

ローランド芸術文化振興財団は、音楽大学や音楽高校で電子楽器を学ぶ学生に奨学金を給付するほか、医療施設へのコンサートの提供、教育機関への機材助成などを事業内容としている。

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