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石油だけでなく、有機EL分野でも高い技術力を保持

有機ELテレビ普及のカギは出光興産が握っている!?

2007年06月23日 00時00分更新

文● 中西祥智(編集部)

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月刊アスキー 2007年7月号掲載記事

有機EL材料

実際の有機EL材料は、チョークの粉のようなもの。これをガラス基板に蒸着(気化した材料を基板表面に付着)させ、電極や駆動回路を組み込んで、有機ELパネルは製造される。

 サントリーや竹中工務店と同様、売上高が3兆円を超える巨大企業としては珍しく非上場だった出光興産だが、資金調達の多様化を目的に昨年秋、東証1部に上場して話題となった。

 同社の主力事業は、もちろん石油関連だ。売り上げの4分の3はガソリン等の石油製品が占め、残りの大半も石油化学製品や石油開発事業で構成される。そんな出光が、実は次世代のディスプレイ技術「有機EL」に関して数多くの特許を保有しており、有機EL材料の開発・製造も行っていることをご存じだろうか。

 有機ELとは、電圧を加えると自ら発光する有機材料(ベンゼン等の有機化合物)を画素に利用するディスプレイだ。有機ELは使用する有機材料の種類によって、様々な色で発光する。このため、赤緑青の色を発する有機EL材料を並べることで、カラー映像を表示できる。画素自体が発光するため、構造が簡単で、発光の効率がよく消費電力も少ない。

 石油から精製・合成した材料による燃料以外の事業展開を研究していた出光は、'80年代の中ごろから同社中央研究所で有機ELの研究に着手。LEDと同様、有機ELも青色を発光させるのが難しかったが、同社は'97年、世界に先駆けて青色材料を1万時間発光させることに成功。現在では発光寿命を2万3000時間(※)にまで延ばしている。他の色の材料や周辺技術も研究・開発しており、青色材料に関する高い技術力と、発光材料以外の様々な有機ELに必要な材料も一社で供給できることが、出光の強みとなっている。

 ソニーが有機ELテレビの年内発売を表明したことで、有機ELはいま、俄然注目を集めている。このソニーのテレビにも、出光の有機EL材料が使用されている。現在の出光の有機EL事業は、各種電子材料を扱う事業のなかのひとつに過ぎない。だが、同社はこの4月、静岡県・御前崎市に生産工場を建設して、有機EL材料の大量生産を開始するなど、いよいよ本腰を入れつつある。

 電子材料部 三輪徳昭氏は「有機ELは今後、大型・小型のディスプレイだけでなく、(蛍光灯に替わる)照明用途も考えられ、将来的には非常に大きな市場になる」と見込んでいる。

有機EL関連特許の出願件数

有機EL技術力は出光がトップ!:出光は有機EL関連特許の出願件数でも14.3%のトップシェアを誇る。しかしPCIで分析すると出光のシェアは36.5%で、2位以下を大きく引き離す。これはそのまま、出光の有機ELに関する技術力を表している。●資料提供:SBIインテクストラ株式会社―技術情報活用のコンサルティングサービスを提供。

2006年の売り上げ比率

売上高は3兆3100億円で、大半を石油製品の売り上げが占める。有機EL事業は、区分としては「その他」に含まれる電子材料事業のなかの1つであり、現状では売上高に対する比率はごく小さい。

※出光による、常に点灯した状態での評価。一般的に、PDPの発光寿命は6万時間程度、液晶のバックライトの寿命も同程度と言われる。それに比べると短いように感じられるが、実装の手法によってテレビとしての寿命は変わるため、単純な比較はできない。

出光興産株式会社

本社:東京都千代田区丸の内3-1-1
創業:1911年6月20日
代表者:代表取締役社長 天坊昭彦
資本金:1086億円(2006年10月末、東証1部上場)
従業員数:4447名(2006年3月31日現在)

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