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ニコニコ動画で証明されたネット動画の新機軸

ユーザーの集合知が起こす動画の新たな展開!

2007年05月23日 00時00分更新

文● 中西祥智(編集部) 写真●吉田 武 

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月刊アスキー 2007年5月号掲載記事

長尾確教授

名古屋大学大学院情報科学研究科 メディア科学専攻 長尾 確(ながお かたし)教授:長尾研究室では、会議内容の効率的な再利用法や、個人用の知的な乗り物に関する研究も行っている。

 名古屋大学大学院の長尾 確教授らは、マルチメディアコンテンツ配信・コミュニティ支援システム「Synvie」の開発を行っている。Synvieは、映像内のあるフレーム、あるいはフレーム内の任意の領域に、コメントとして文字情報を追加できる。この点では、話題の「ニコニコ動画」(3月上旬現在はクローズドな試験サービス中)に似ている。そもそも、ニコニコ動画は開発段階でSynvieを参考にしており、βサービス時のニコニコ動画の謝辞には、その旨が記載されていた。

 だが、Synvieの背景にある思想は、エンターテイメントに特化したニコニコ動画とは大きく異なる。長尾教授らはこれまで、コンテンツへの「アノテーション」と、その応用技術を研究してきた。アノテーションとはコンテンツに対してメタデータ(関連するデータ)を付加することで、テキストにXMLタグを付ける作業などがこれに該当する。

 アノテーションするということは、プログラムにも理解できる「意味」をコンテンツに与えるということだ。たとえばテキストコンテンツの場合、そのままではプログラムには理解できない。だが、語句や構造を説明するタグが付加されれば、文章がどんな構造で、語句にどのような意味があるのかがプログラムに判断できるようになる。そうなれば、高い精度でテキストを翻訳したり、要約・検索することが可能になる。これは映像コンテンツでも同様だ。

映像コンテンツの要約・検索も容易: 映像コンテンツにアノテーションがなされていれば、この画面のように映像を要約して再生できる(画面の例では、タイムラインがオレンジ色になっている部分だけを再生する)。映像の意味的な検索も容易に行える。このビデオ要約システムも、長尾教授らが開発している。

 では、誰がアノテーションするのか。Synvieでは映像にコメントを付加でき、さらに映像をもとにブログを書くこともできる。この作業は、ユーザーは意識していないが、実は映像にアノテーションしているに等しい。Synvieは、「集合知」的に、誰もがアノテーションに参加できるフレームワークのひとつとして、具現化されたものなのだ。

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