「国内で“iTunes Music Store”(iTMS、現iTunes Store)がスタートした2005年8月から2007年3月末までの期間、米アップル社は、日本のiTMSで販売した楽曲の著作権使用料を日本著作権協会(JASRAC)に支払っていない」
このような内容の記事が17日付けの朝日新聞に掲載されたが、JASRACはこれを「誤報である」と反論している。いったいどんな背景があったのか、JASRACに電話取材した。
「まず事実から述べますと、アップルさんは著作権使用料を支払っています。私どもは16日に定例記者会見を開いたのですが、記者会見後、朝日新聞の記者の方がうちの役員に個別で質問をされていました。その際に誤解が生じたようです」
朝日新聞の記者がJASRACの役員に、「2006年度の決算書にアップルからの支払いが載っていないようだが」と質問したところ、JASRACの役員は「暫定的な金額は支払ってもらっているが、権利者への分配がまだ終わっていないから、決算書に載せてない」と回答したという。JASRACの広報はこの際に誤解が生じたのではないかと話す。
アップルは“ちゃんと”支払っている
アップルは昨年、2億5千万円の著作権使用料をJASRACに支払っている。これは2005年8月から2006年8月まで期間の“暫定的”な著作権使用料だ。
iTMSではJASRACが管理していないアメリカのアーティストなどの楽曲も多く販売されている。また、アップルが提出した楽曲使用の申請書類が、JASRACの定める書式にそぐわないものが多かったり、言語の違いなどから、事務処理に遅れがでているという。こういった理由から、JASRACは暫定的に2億5千万円という数字を提示し、アップルが了承したというかたちだ。ちなみにiTMSについては、販売価格の7.7%がJASRACに支払われるシステム。総ダウンロード数などから2億5千万円という金額が導き出された。誤差は後日修正されるという。
問題はシステム処理の遅れ
つまり、アップルがJASRACに対して著作権使用料を払わなかったのではなく、最終的な数字が確定していない状態。権利者への分配はまだ行なわれていないので2006年度の決算資料には、この数字が計上されていないということだ。
こういったことはよくあるのか? と聞いたところ、JASRACは次のように答えた。
「普通はきっちり金額を確定した上で支払ってもらいますが、アップルは例外です。日本とアメリカでは著作権の管理システムが違うので、どうしても処理に時間がかかるのです。例えばドイツやフランスの会社がアップルのように日本でビジネス始めた場合でも、同じようなことは起きると思います」
iTMS開始から、アップルとJASRACとの間ではしっかりとした契約が結ばれている。JASRACは9月には著作権使用料を著作権者へ分配できるよう、処理を急いでいるという。
ちなみに、朝日新聞社にこの件についてコメントを求めたところ「現在調査中」との答えだった。asahi.comの当該記事は現在削除されている。