このページの本文へ

第14回LSI・オブ・ザ・イヤーが決定、大賞はシャープとNECシステムテクノロジー

2007年05月16日 23時09分更新

文● アスキービジネス編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

5月16日、東京ビッグサイトで開催中の第10回組込みシステム開発技術展の会場で、第14回LSI・オブ・ザ・イヤー(主催:半導体産業新聞、共催:リード エグジビション ジャパン)が発表された。デバイス部門のグランプリにはシャープのワンセグ用マルチメディアLSIが、設計環境/開発ツール部門のグランプリにはNECシステムテクノロジーのLSIの設計・検証環境が選ばれた。


外国勢に押されるなか、日本企業2社がグランプリに


第14回LSI・オブ・ザ・イヤーを受賞した企業の代表者ら。写真前列中央がシャープ電子デバイス開発本部長の西岡 寛氏、後列中央がNECシステムテクノロジー取締役の西 龍己氏

第14回LSI・オブ・ザ・イヤーを受賞した企業の代表者ら。写真前列中央がシャープ電子デバイス開発本部長の西岡 寛氏、後列中央がNECシステムテクノロジー取締役の西 龍己氏

 LSI・オブ・ザ・イヤーは、過去1年間を通じて優れた成果を出したLSI製品・技術を表彰するもの。デバイス部門と設計環境/開発ツール部門からなり、今年は国内外からデバイス部門に1276点、ツール部門に150点がエントリーし、グランプリ以下計10社が表彰された。受賞した企業と製品は下記のとおり。

デバイス部門
グランプリ シャープ ワンセグ用マルチメディアLSI「LR38888」
準グランプリ アーム 「ARM Cortex-R4F」
優秀賞 日本アルテラ 「Stratix III FPGAファミリ」
優秀賞 日本AMD 「AMD Opteronプロセッサ」「AMD-Virtualizataion」
優秀賞 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 「4MビットMRAM-MR2A16AT35C」
設計環境/開発ツール部門
グランプリ NECシステムテクノロジー 「CyberWorkBench」
準グランプリ 日本ケイデンス・デザイン・システムズ 「業界標準CPFをサポートするLow Power設計ソリューション」
優秀賞 礎デザインオートメーション 「FP-Fixer」
優秀賞 コーウェア 「CoWare Virtual Platform」
優秀賞 TSMCジャパン 「65nm設計対応DFM準拠デザイン・エコシステム」

 デバイス部門のグランプリは、シャープのワンセグ受信用マルチメディア処理LSIが受賞した。ワンセグの動画、音声のデコード処理を行なうLSIで、低消費電力を実現したことで携帯電話やポータルブルテレビへ組み込みやすくした。シャープの電子デバイス開発本部長である西岡 寛氏は、「ワンセグ機能を容易に実装できるようにしたのがこのLSIの特徴。ワンセグが始まってからタイミングよく商品化できたのが受賞の理由につながった」と話した。同製品はシャープ製の携帯電話だけでなく、他の携帯電話機メーカーにも納入しており、今後はさらなる高画質化なども検討しているという。

 設計環境/開発ツール部門のグランプリに輝いたのは、NECシステムテクノロジーの「CyberWorkBench」。C言語でLSIの設計、開発を行なう統合環境で、従来の開発手法に比べて大幅に工数を削減できるという。NECシステムテクノロジー取締役の西 龍己氏は「『LSIの設計がCなんかでできるか』と当時はバカにされたものだが、20年がかりでやっと製品化にたどり着けた。業界ではLSIの技術者が不足しているが、C言語の技術者なら多くいることからパラダイムシフトが起こせるのではないかと考えて作った製品だ。日本発のデファクトを目指したい」と喜びを語った。

九州大学システムLSI研究センター長の安浦寛人氏

九州大学システムLSI研究センター長の安浦寛人氏

 審査委員長を勤めた九州大学システムLSI研究センター長の安浦寛人氏は「グランプリは日本企業が受賞したものの、やはり傾向としては外国勢が強いという印象だ」と総括。

 グランプリを受賞した2社については、「NECシステムテクノロジーの製品は、長い年月をかけて苦労に苦労を重ねて開発されたもの。じっくりとした研究開発、しっかりとしたマネジメントがあってこそ、こうした本流となる技術に結びついた。一方のシャープは、日本の得意分野である携帯電話市場で、品薄になるくらいのトップシェアを持つ高い技術が注目された。また、放送と通信の融合が叫ばれる中で、ひとつのソリューションとなるのが今回の技術ではないかと思う」と受賞の理由を説明した。

カテゴリートップへ