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治療だけじゃなく患者のケアにも活かされる最新技術

少子化なのにお産が増えた 最新機器で注目を集める産婦人科

2007年05月23日 00時00分更新

文● 外村克也(編集部) 写真●小林 伸

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月刊アスキー 2006年12月号掲載記事

持田シーメンスメディカルシステム

4Dエコー製品を販売する持田シーメンスメディカルシステム企画部主任の遠藤雄一氏(左)と臨床検査技師の柳原悠貴子氏(右)。国内のエコー機器市場はおおよそ1万台。4Dエコーが大々的に登場したのは5~6年前で、現在はまだ普及段階だという

 年々減少していた出生率が、2006年はようやく上向きになる見込みだ。長年、少子化の深刻な煽りを受けてきたのが産婦人科。明るい話題が聞こえてきたというのに、地方の病院では「産婦人科」のプレートが外される事態が相次いでいるという。そんな非常に厳しい状況のなかで、産婦人科では妊婦のニーズを捉えたサービスが姿を見せ始めている。 お産を控えた妊婦にとって、胎児の成長は非常に気になるところ。これまではエコー機器を利用して、お腹の断面を見ることができたが、画質が粗く「ここが頭ですよ、手足ですよ」と医師の説明を受けなければ、一般の妊婦にはとうてい理解できないものだった。ところが最新のエコー機器では、胎内の様子を立体で、しかもリアルタイムに見ることができる(立体を示す3Dと、時間軸の1Dをあわせて、4Dエコーと呼ぶ)。この技術を利用して、お腹の中にいる胎児をビデオに録画するサービスを始めた産婦人科が目立ってきた。

プローブ

超音波を送受信する振動子「プローブ」。左は従来のエコー、右は4Dエコーのもの。4Dエコーのプローブは、内部で受信機が回転する仕組みのため、ひとまわり大きい。

 今年はじめに4Dエコーを導入したという新中野女性クリニックでも、このサービスを始めている。同院の海老原肇院長は「従来の2D型エコーに対し導入費用が4~5倍と高価だが、4Dエコーの話をWebや雑誌で聞きつけてやってくる妊婦さんが増えた」と語る。4Dエコーはまだまだ普及段階で、大病院にくらべ資金が少ない街の産婦人科での導入はまれだ。東京都目黒区に産婦人科を構える、あんどうレディスクリニックの安藤一人理事長は「4Dエコーを求めて、長野や静岡など地方からの外来が増えた。多い月は40~50人の外来がある」のだという。 外来の場合、診療時における胎児のビデオ録画を行うサービスの価格相場は1件あたり1万~2万円前後だ。それに対し、4Dエコー導入にかかる費用はおおよそ2000万円と、見返りがあまりにも少ない。しかし安藤氏は「子育ての大切さを説くのも我々の大切な仕事。その際にお腹の胎児を見せることで、いちはやく(母親になったことを)実感していただける」と語る。妊婦への心のケアも、ここにきて変化しはじめているようである。

4Dエコーでみた胎児のようす

4Dエコーでみた胎児のようす。手足の様子がハッキリ分かる

従来のエコー

同じ胎児を従来のエコーと同じように断面的にみたもの

 医療機器を販売している持田シーメンスメディカルシステムによれば、超音波技術は胎児の画像を見るほかに、乳ガンの診断や治療などの用途にも取り入れられてきつつあるとのこと。業界では現在、エコーで表面のやわらかさなどの質感を調べる機能がついた製品も販売されている。質感の違いで腫瘍が良性か悪性かを判断する基準についても研究が進められており、実用段階になれば、今後は産婦人科以外からも注目を集めることになりそうだ。

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