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HP MOBILITY SUMMIT 2007 Vol.3

米HPのキーパーソンに聞く、モビリティー戦略

2007年05月14日 00時00分更新

文● 編集部

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中国の上海で9日と10日に開催された“HP MOBILITY SUMMIT 2007”。その会場内で、米ヒューレット・パッカード社のパソコン関連事業を統括する、同社Personal System GroupのExective Vice President、Todd Bradley氏のお話を聞く機会を得た。

Todd Bradley氏

Todd Bradley氏



コアの事業に注力しつつ、“アジェンシー”を広げる


 HPは昨年、長らく世界シェアナンバー1の位置をキープしてきたデルを抜き、パソコン市場のトップに立った。特にモバイルの分野は好調で、売上げ比率は同社PSG事業の49%、過去4四半期の売上げは131億ドル(約1兆5700億円)、2007年第1四半期(2006年11月から2007年2月)の売上げは前年同期比40%増という破竹の勢いだ。

 パソコン市場で勝利できた理由はなんだったのだろうか? Bradley氏は以下のように分析する。

「過去2年間の成功の背景には『メインストリーム市場でのブランド認知』と『販売チャネルの拡大』があったと思います。ハイクオリティーな製品を、競争力のある価格で、直販/リテールを問わず、さまざまなチャンネルで提供できた。これにより、成長率が高い市場セグメントでカスタマーの評価を高められたことが、われわれの成功につながったと考えています」

 Bradley氏を始めとした、HPのキーパーソンは「コアとなる事業をアジェンシー(周辺領域)に広げることが重要だ」と口を揃える。これは世界規模で展開できるような重要な事業領域を核に据えながら、その周辺領域を確実に取っていくという主旨である。

 それではHPとして、重視している分野はどこになるのか。「モビリティーの分野はいくつかのセグメントに分かれており、それぞれのニーズに合わせた戦略が必要だ」Bradley氏は話す。

 例えば、コンシューマー分野では、エンターテインメントやコミュニケーションが成長を牽引している。企業向けでは高いセキュリティー、TCOの低減、品質の高さといった部分が重視される。ネットワークへの接続性をどのように確保していくかなど、共通する要素もあるが、利用されるアプリケーションやサービスは異なっており、それに合わせた取り組みが必要になる。

 また、モビリティーの分野においては、ソリューションやアプリケーションの重要性がよりいっそう高まってくるとBradley氏は言う。その一例として紹介されたのが、日本におけるモバイルシンクライアントの事例である。HPは3月にこの分野で日立製作所との提携を発表した。バーチャライゼーションやCCIブレードといった、HPの持つ技術的なアドバンテージを生かしながら、セキュリティーに優れ、安価な新しいソリューションを提供できるシンクライアンを開発する。日本におけるこうした事例は、有力なアジェンシーのひとつとして、今後の可能性を見ていくために、注目している分野だという。



HPのような大企業でも「変われる」ことを証明できた


 一方、好調な業績を背景とした積極的なR&D投資も進んでいる。過去2年間の成長の過程では、特に価格競争力を重視した製品展開が行なわれてきたが、今後は分野に特化した製品開発やデザイン性の向上、機能面での差別化なども進めていくという。

「重要なのは、ひとつのキーとなるアトリビューション(要素)に特化するのではなく、常に複数の要素のコンビネーションが必要になってくる点です。いいデザインをアグレッシブな価格で出す。これを、広い市場に対してさまざまなチャネルで提供する。これが“バリュープロポジション”を強めるのです」

 パソコン市場にはまだまだ大きなチャンスがあるというのが、同氏の見解だ。市場のコアに集中し、その周辺部分を成長させる戦略をとりながら、ローコスト、ハイバリュー、ブロードセールスなどスケールメリットを生かしたビジネスが、好調なHPの業績を支えてきたことは上に述べたとおりだ。しかしそれよりも重要なのは、市場の変化に対して、HPが適切な判断を下せる点だとBradley氏は話す。

「私たちはビジネスを3年スパンで見ています。3年間というスパンで見れば、このアプローチのまま進む可能性が非常に高いと思います。しかし、これまで2年間のビジネスで、われわれが証明できてきたのは、HPのような大企業でも迅速に変化し、アグレッシブな実行を行なえると言う点です。これにはHPに集まった人材が強みになっている。世界中でトップクラスの人材を確保することにわれわれは注力しているのです」

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