人検索に注がれる熱い注目
さて、話を米国での状況に戻すと、昨年11月にWinkが人検索を始めて以降、続々と人検索サービスが増えており、熱い注目を集めている。
最近ではIT系ニュースサイトとして有名な“Techcrunch”のマイケル・アリントン氏がモデレーターとなって、人検索を提供するSpock、Wink、“Zoom Info”という3サービスの代表を米グーグル本社に集めてパネルディスカッションを行なったという(参考リンク)
これらの人検索が凄いのは、このところ検索サービスの王者として君臨し、地図検索や書籍検索といった新しい検索分野も開拓し続けてきたGoogleが開拓していなかった分野であったということ。Googleもこれらの企業に注目をしていて、もしかしたら買収を検討しているのかもしれない。
ちなみに、Googleのように未開な分野を開拓しているベンチャー企業ということで、人検索サービスの企業には投資家のお金も集まりやすい。WinkもSpockもベンチャーキャピタルから700万ドルを調達している。
人検索は日本でローンチできる?
人検索サービスを見て「なんだか凄そう」と思う反面、「日本語の名前はどうなのか」、「個人情報保護の観点から見てどうなのか」といった疑問を感じる人もいるだろう。
Spock社によれば「サービスが立ち上がるまでの間は、英語版サービスとしての機能のブラシュアップに努めるが、サービスの公開後は世界展開も視野にいれていきたい」という。その一方で「英語以外の名前や住所、電話番号の表記には現段階から対応しようと思っている。そのために内部の文字コードはUTF-8にしてある」という。
個人情報保護については、質問をする機会を逃してしまった。このため筆者の考えを述べることにしたい。個人情報保護の観点では、たしかにいくつか問題は浮上するだろう。しかし、問題があることがわかれば、わかった時点で適正な改良を加えるというのが、加速する最近のIT系ベンチャーのサービスにおける進化のあり方ではないだろうか。
これに対して、日本では最初から想定しうる問題すべてに対処した上でサービスをローンチしようという考えの人も多い。しかし、想定しうる問題は、どんどん膨らむ一方で、それにあわせて開発もどんどん遅れていく。
そういった開発の仕方では、海外のベンチャーが、すでにたくさんサービスを立ち上げたかなり後に、まるでそれを真似たかのような形でサービスを後出しするしかできなくなってしまう。しかも、いざサービスを立ち上げたら、立ち上げたで、そこからまた問題が発生し、その対応に追われることになるのだ。
どちらの姿勢も一長一短だが、スピードが何よりも重視されるIT系ベンチャーの世界での生き残りの上では、アメリカ型の方が有利に思えてならない。
YouTubeなどの動画共有サービスが、現在、毎週のように問題を起こし、裁判で争いながらあるべき姿を探っているのと同様、Spockなどのサービスは、おそらく今年の後半に正式にスタートし、そこからさまざまな問題を引き起こしながら新しい市場を築いていくことになるだろう。
筆者紹介─林信行
フリーランスITジャーナリスト。ITビジネス動向から工業デザイン、インタラクションデザインなど多彩な分野の記事を執筆。『MACPOWER』『MacPeople』のアドバイザーを経て、現在、日本および海外の媒体にて記事を執筆中。マイクロソフト(株)の公式サイトで執筆中の連載“Apple's Eye”で有名。自身のブログ“nobilog2”も更新中。オーウェン・リンツメイヤーとの共著で(株)アスペクト刊の『アップルコンフィデンシャル(上)(下)』も発売中。
*次回は5月25日掲載予定
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