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アキバでパーツを揃えたマシンで達成

東京大学などがIPv6のインターネット速度記録を更新――平均9.08Gbps

2007年05月08日 20時54分更新

文● 編集部 橋本 優

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東京大学は8日、同大学を中心とした国際共同研究チームが2006年12月に達成した“IPv6”インターネット速度記録が、米国ワシントンで4月24日に開催された“Internet2 Spring Meeting”で認定されたことを発表した。理論上、この記録が10Gbitネットワークを用いた最終の記録になるという。

今回の記録を達成したネットワーク経路

今回の記録を達成したネットワーク経路。東京に設置したパソコンから、アムステルダムなどを経由して東京にある別のパソコンにデータを転送した

今回の記録は、2006年12月31日に3万km(実際には3万2372km)のネットワーク上で、次世代インターネットプロトコル“IPv6”による9.08Gbpsのデータ転送速度、27万2400Tb-m/sの距離バンド幅を、シングルストリーム/複数ストリーム(1対のサーバー間で多数のTCPコネクションを張る通信方式)の両方で実現したもの。ちなみに、前日の30日には、同じネットワーク上で7.67Gbpsの転送速度、23万100Tb-m/sの距離バンド幅を実現しており、1日で記録を塗り替えた。

この記録が米国の学術団体“Internet2”が主催するInternet2 Spring Meetingにおいて、インターネットを用いたデータ転送能力を評価する“Internet2 Land Speed Record”(LSR)で認定された。なお、インターネット速度記録は“次の記録は前の記録より10%高速でなくてはならない”という決まりがあり、今回の記録の10%高速化は10Gbを超えてしまうため、事実上これが最終記録になるという。

さらに今回の記録は、東京大学などの研究チームが樹立し、昨年2月のLSRで認定された“IPv4”の速度記録(8.96Gbps)を上回った。

今回の記録達成のために、国内のインターネットに関する研究プロジェクトである“WIDEプロジェクト”や、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)の研究開発テストベッドネットワーク“JGN2”、エヌ・ティ・ティ コミュニケーションズ(株)など、国内外の企業や研究機関が協力。回線は光ネットワークの相互接続などを推進するための国際コミュニティ“GLIF(Global Lambda Integrated Facility)”の協力を得て調達した。

記録の達成を可能にした2つのテクノロジー

今回の記録は、“レイヤ間最適化技術”と“ゼロコピーTCP技術”の2つの技術により達成が可能になったという。前者により、TCPの流量制御と協調するパケット位置の最適化を行ないパケットのロスをなくし、後者ではユーザーメモリーからカーネルメモリーへのデータのコピーという処理をなくす(メモリーを共有化する)ことで、サーバーのCPU負荷を低減し、CPU使用率100%の状態(ネットワークの処理が追いつかない状態)を防いだ

今回の実験に使用したサーバー

今回の実験に使用したサーバーは、秋葉原などでパーツを購入して自作したという

これらの技術はソフトウェアで実装されており、ハードウェアは秋葉原などで普通に入手可能なパーツで制作したサーバー(デュアルコアのXeon-3GHz×1基に4GBメモリー、米Chelsio Communications社製 S310E-SR10Gb Ethernet Adaptor with PCI-express ×8)を使用したという。OSはLinux(Kernel 2.6.18.5 x86_64/CentOS 4.4)を採用する。

東京大学 情報理工学系研究科の平木 敬教授

東京大学 情報理工学系研究科の平木 敬教授

東京大学 情報理工学系研究科の平木 敬教授は、今回の記録達成について「PCI Expressバスやビデオインターフェース、メモリインターフェースを地球の反対側までそのまま伸ばせる性能レベルを意味する技術」だとした。

また、次世代の科学情報システムについて、「一部の金持ちの研究者だけではなく、ごく普通の研究者でも研究の速度を非常に上げことができる」ことや「対象がシミュレーションだけでなく、データインテンシブ計算や探索を含んだもの」であることを目指したいが、現状のスーパーコンピュータでは「非常に高価でごく一部の人しか使えず、ネットワークが使いづらい」という問題があると指摘。その上で「早くて、安価で、使いやすいものにするにはどうしたらいいか」を追求することが研究のモチベーションになっているとし、さらにその先の目標として、超高速の情報処理を一般化し「誰もが楽しめるようにしたい」と語った。

今後については、次の記録、つまり10Gbpsを越すため、10Gbネットワークを2本使用した実験などを検討しているという。

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