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2002年に、久夛良木氏が語ったこと

2007年04月27日 21時00分更新

文● 編集部 ※引用部分は月刊アスキー掲載時のものを原文ママで掲載しています

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真のブロードバンド時代のために、 まったく新しいプロセッサとOSを開発中。


―― トポロジーは関係ない?

久夛良木 論理的には全部ネットで構成しているわけだから。ただ、そのホームゲートウェイって何かと言ったときに、家電屋さん、たとえば松下さんとかソニーにつくれるんだろうかという問題は残る。家電という砦を侵されないために一生懸命ハードディスクなどいろいろなものを既存の商品に入れて、「これで何でもできます」というのを出しそうでしょう。OSもミドルウェアも書いたことがない彼らにまっとうなホームゲートウェイやサーバができるかどうかは疑問です。今の段階では。

―― そうするとPS2はどうするんですか?

久夛良木 PS2はまず、ダイレクトにネットにつなぎます。イーサネット経由ではありますが。どこでもいいと言っているわけではなく、たとえばNTT-BBさんだとかYahoo!BBさんと組みながらやる。PS2はイーサでつながりますから、テレビやハードディスクレコーダもイーサにつながるようになれば、全部ぐるっとつながることになりますね。

―― 無線でIPv6につながるだとかね。

久夛良木 そう。多分家の中にイーサを引きまくってる人はいないでしょうから、無線ですね。

―― 今のところはそうですね。

久夛良木 とすると、家にイーサがきて、ルータでせいぜい4ポートくらいあって、テレビとPSとパソコン2台程度と、まあ4つあればいいかという世界。それ以外のところは多分無線になると思う。この世界がまずあると。

―― それっていつ頃実現するんですか?

久夛良木 2002年の後半。かなり遅くですが。どうしてかというと、ソニーと一緒に僕らがそれを始めるからです。

―― ブロードバンドも1000万ユーザーとかそういうタイミングですかね。

久夛良木 うまくすると1000万、ちょっと低めに見て600万? 僕はまずはブロードバンドではなく、2002年はまず常時接続をキーワードにしたい。みんなブロードバンドという言葉に踊っているけれど、ほんとうの意味で大事なのは常時接続なんですよ。実は今のテレビもPS2も120%ブロードバンドになっているわけでしょう。だってPS2の中のバンド幅はとんでもない数字で、それがたまたまテレビにつながって出力されているわけです。テレビだってそう。実際はとんでもないバンド幅で、串型フィルタとかいろんなものが動いていて、Aチャンネルが効いていて、最終的にはビデオDACだとかで出しているわけでしょう。ユーザーはパソコンのようなナローバンドではなくて、昔から力道山の頃からブロードバンドを体験しているんですね。つまり、ユーザーにとってブロードバンドは当たり前のことなんです。それがネットにつながったときに、急にWebTVのような画面を見せられたら泣きたくなるじゃない。バックトゥーザパーストになっちゃう。
 今、テレビのゴルフ中継でタイガー・ウッズが打ってるそばでパッとスタンスがどうでとか数字が出てくるのは、ほとんどがソニーの放送用システムを使っています。もしくは最近はノンリニアの編集システムがコンピュータベースでできているでしょう。ああいう世界がネット上でも当たり前になってほしいのです。

―― じゃ、その前にナローバンドというかそれとブロードバンドの中間程度の速度でも、常時接続で、久夛良木さんは何か考えていると?

久夛良木 今のADSLって局から数km離れている人は、だいたい300kbpsくらいになってしまう。300kbpsでも常時接続ならいいじゃないかということです。

―― そこでの利用シーンとしては、どんな絵があるんでしょう。PS2がまずあって……。

久夛良木 PS2を買ってきます。ソフトは基本的にはみんなリッピングする。あと雑誌の付録のROMにも付いて、必要なプラグインをリッピングするとか。ハードディスクは40GBではあっという間に足りなくなると思うけど、そういう状態で常時接続していると、番組だとか、要するにちょっと必要なデータのパケット量って300kbpsあればそこそこ転送できる。全部それで届けるのは無理ですが、PS2が爆発したおかげでDVD-ROMも普及してコストも下がっているから、連動することにはほとんど問題がない。ハードディスクも重要です。もちろんハードディスクもネットワークに接続されたままで使うんですよ。そうなったときに、ユーザーがオンエアなのか、ディスクがDVD-ROMを読みに行ってるのか、ハードディスクから読んでいるのか、プラグインをもらいに行ってるのかを気にせずに、テレビを見てればいいというような感覚が一番いい。どんどんメディアが統合されていけばいいね。

―― さっきの「溶ける」という世界をもっと進めてしまうという感覚ですね。

久夛良木 本当は溶けてないんですけどね。全部ブロードバンドの中で動いていませんから。ネットの中ですね。それって何がネックになっているかというと、今のサーバがPCのクラスタシステムだから、限界があるわけですよ。何をやるにしても。本当の意味でのブロードバンドをサポートするためには、まったく新しいアーキテクチャとより柔軟に並列処理できるものが必要。あとまったく新しい統合OSも必要になってくる。カーネル群も。それを研究開発しましょうというのが、僕らが東芝さんやIBMさんとやってるプロジェクトなんです。

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