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2002年に、久夛良木氏が語ったこと

2007年04月27日 21時00分更新

文● 編集部 ※引用部分は月刊アスキー掲載時のものを原文ママで掲載しています

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―― それはPS3を出されるときのことをイメージしていらっしゃるんですか?

久夛良木 PS2の次世代というときにはなるけど、PS3の話ではないです。あくまでもサーバのプロジェクトだから。多分そのときは、PS3というんじゃなくて、PS2もPSも放送もいろんなものがネットワークの中でやりとりされるようになる。

―― やりとりされるというのは、コンテンツをということですか?

久夛良木 すべてです。コンテンツが、なんて問題ではなくて、アーキテクチャというかフォーマットというか全部が機種依存しなくなる。データをやりとりするとき、データだけ送るということは滅多になくて、プラグインの形式で中間言語から何からまとめてパッとどんどん送ってしまう。そうなってくると、ありとあらゆるものは送れるんですよ。ひょっとしたらWin dows XPだって将来はパッケージでなく、そのままネットで流通するようになるかもしれない。

―― プロトコル付きでデータを送ってしまうというようなことが注目されていますが……。

久夛良木 はい。手続き付き、プラグイン付き、プログラムデータ付き群ということですね。

―― それを処理するには、クライアント側は何でも受けられないとまずくないですか。

久夛良木 先の話ですけど、次の世代のPSになると、サーバ/クライアントという概念がなくなって、僕らそれをCellと呼んでいるんだけれど、コンテンツサーバを構成する1単位になるんです。それがCellだと思ってください。プリント基板上で並列化するバンド幅よりも光ファイバでネットで結んだほうが、よほどレイテンシのスループットが速いと。もちろん世界中で適用されるものなので、スループットの数値は全地域に保証されるものではないけれど。世界中に置かれたCellが光でつながることで、まるで1つの超並列マシンになる。それが、ブロードバンドの正体になると。ただ、今のグリッドコンピューティングとはちょっと違う。それは今は存在するものに対してタスクを割り当てて、集めてくるってやつだけど、そうではなくて最初から並列になっているオペレーティングシステムというのが今後存在するようになる。ネットの中では。そのための新しい概念に基づくプロセッサをつくっているんです。

Cellのイメージ

Cellのイメージ

―― 場所としてはどこで?

久夛良木 オースチンにあるIBMのワトソン研究所の中でもトップの、選りすぐりのスタッフを集めています。ほかには大学のプロフェッサーの方々と話しをしています。分散OSや並列処理など、いろいろな研究開発をやっているんです。2001年のキックオフパーティで、チーフアーキテクトの1人が「人生にこれほどのチャンスはない!」と興奮して言ったほどのプロジェクトであり、メンバーです。そしてそれは次世代PS2のためではなくて、世界がブロードバンドネットワークとして融合される日、トポロジーはアーキテクチャはどうあるべきか極めるためにやっているのです。

―― イメージ的には、サーバ側で今のPCなり、PSなりのいろいろなアーキテクチャを、バーチャルマシン的に処理して、ブロードバンドで送って、クライアント側では個々のアーキテクチャなどを気にせずに何でもとってくるということですか?

久夛良木 たとえばCellというコンピュータが、あるいはインテルのネットワークプロセッサに、ある1つの計算エンジンの単位があったとする。それが世界に1億個、各家庭に存在するとしますよね。そこで、たとえば新しい遺伝子解析をしたいとする。研究所にある1024台をつなぐよりも、世界にある100万台をつなぎましょうというと、パッとOSがかぶって処理するほうが効率もいいし、パワーもあるでしょう。

―― ネットワークが速ければ可能ですよね。

久夛良木 少なくともPSの基板の上で、一生懸命Rambusチャンネルでつなげるよりも圧倒的に速いことは間違いないです。

―― プロセッサというか、計算の核になっている部分と、光ができるだけ近くつながったほうがいいということですか?

久夛良木 チップは500ピンとか700ピンのPGAになっているけれど、あんなことよりも理想で言えばチップに光伝導チャネルが1つあって、それでプラグがピッと差さって出てくればいいですね。サーバとしては当然スイッチとルータが大事でしょ。スイッチとルータには、現在要素技術がたくさん提案されていますよね。光の経路を高速に切り替える、もしくは1本の光をマルチキャストするとか。ルータそのものっていうのはセキュリティも引き受けていますが、今のとはまったく違うトポロジーの超高速のネットワーク用につくった、ルータが必要になる。そういったものをドンと置くと。コンテンツサーバのほうは、今はいくつかのクラスタをバーッと並べた中に書き込んでいるんだけれども、所詮は原子生物をたくさん集めても人間にはならんぞというレベルがあると思うわけ。将来は1つ1つの細胞体、つまりCellって言ってるんだけど、1つ1つのサーバのエンジンが少なくともディープブルークラスであるべきだと僕らは思っている。もしディープブルークラスのものを、ワンチップにすることができたら、そしてそれを高速の光ファイバで互いを密結合できたら、これはすごいことが起きるよね。OSも違うし、アナロジーが全然変わってきてしまう。

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