神の眼をもつカメラ
この撮影で使用されるカメラも独創的なものだ。
航空測量には、大判で鮮明な写真を撮影する必要があるため、高解像度のカメラが必要だ。高解像度化するためには大きな撮像素子(CCD)が必要になるが、現状では一定以上の大きさの撮像素子を作れない。そこで工夫が必要になる。
Virtual Earthの撮影に使われているのは、Vexcelのカメラ“UltraCamD”(UCD)と“UltraCamX”(UCX)だ。
写真を見てもらうと分かるとおり、UCD/UCXには8つのレンズが付いていて、中にはモノクロ用に9個、カラー用に4個、合計13個のCCDが内蔵されている。実はこのたくさんのレンズとCCDに秘密が隠されている。UCD/UCXでは1枚の大きな写真を撮る代わりに、1シーンを9つのCCDで9分割して撮り、それを1枚の写真に統合する。
大きなCCDができないなら、分割して高解像度な画像にしてしまおうという発想だ。
具体的には、9つのCCDを内蔵した真中の4つのレンズで、モノクロ9分割の画像を撮影し、両側の4つのレンズでRGB各色と近赤外線の撮影を行なう。1枚の画像を作るために、4回の撮影が必要になるが、位置合わせには高精度なGPSの情報が利用されているという。
モノクロとカラーを分けて撮影する理由は、データを低容量化するためだ。最新機種のUCXでは、1億3593万画素(1万4430×9420ドット)のモノクロ情報の上に、それよりも粗い、約1510万画素(4810×3140ドット)のカラー情報を重ねて最終的な画像を出力する。これは衛星写真などでも使われている技術だという。
しかし、1枚1枚の低容量化を計っても約1億万画素のデータは大きく、画像のサイズは1枚あたり約400MBにもなる。そのためUCXは3.4TBのHDDを含めたシステムとして提供される。
「1億3593万画素のカメラで撮影すると、人の頭ですら認識することが可能です。他社の航空撮影用カメラではここまで細かく写せません」(網代氏)
UCXでは高度500mから撮影すると、1ピクセルあたり4cmの分解能になるという。まさに神の眼と呼びたくなるような解像度だ。