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栗原潔の“エンタープライズ・コンピューティング新世紀” 第1回

いまあえてWeb2.0を分析する(1)

2007年04月10日 04時30分更新

文● 栗原潔

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Web 2.0の議論を実りあるものにする秘訣とは


 そもそも「Web 2.0とは何か?」という質問に的確に答えられる人は少ないのではないだろうか?

 ブログやSNSといったツールを指すこともあるし、集合知的な考え方を指すこともある。人によっては、ロングテールやSaaSなどのビジネスモデルだったり、Ajaxのような実装技術を指すこともあるだろう。

 私はよく講演などのつかみで

Web 2.0に対する議論を実りあるものにする秘訣は、Web 2.0とは何かについて語らないことである

と言うことがある。

 要するに、Web 2.0の定義は本質的にあいまいであり、人により、そして時の経過とともに変わっていくものなので、あまり厳密な定義をしてもしょうがないということである。



提唱者自身も厳密に定義付けていない


 Web 2.0に関する最も重要な記事と思われる、ティム・オライリー(Tim O’Reilly)の記事“What is Web 2.0?”(2005年9月)においても、実は「Web 2.0とは何か?」という問いの答えは書かれていない。今ネットの世界で起きつつある新しい動向に「総合的な名前を付けてみてはどうか」と提案して、その具体的な新しい動向──例えば、ロングテールや集合知を例示しただけである。

 2006年12月にティムは自身のブログで、新しいコンパクトな定義を提唱しているが、その内容も

インターネットをプラットフォームとして活用するムーブメント、そして、新たなプラットフォーム上で成功するためのルールを理解しようとする試みにより生まれる、コンピュータ産業におけるビジネス革新

というものであり、外縁がはっきりしないということについては同じである。

 ということなので「これがWeb 2.0である」と限定的な定義をしてしまうことは、間違いであるだけではなく危険であるとも言える。実際、私がWeb 2.0について話すときも

今回はWeb 2.0の“~~の局面”(例えば、集合知の局面)を中心に話しますが、それがWeb 2.0のすべてではありません

と前置きすることが多い。ちょっと気持ちは悪いがしょうがないであろう。

 一般に、Web 2.0について議論する時には、どの局面にしぼって話をするかをローカル定義してから行なわないと話が拡散してしまう危険性が高いと思う。

 次回以降は、いわゆるネット系企業ではない一般企業の情報システム部門の視点に立って、Web 2.0に対してどのように考えていくべきかを分析していくこととしたい。


筆者紹介-栗原潔

著者近影 - 栗原潔さん

(株)テックバイザージェイピー代表、弁理士。日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より独立。先進ITと知財を中心としたコンサルティング業務に従事している。東京大学工学部卒、米MIT計算機科学科修士課程修了。主な訳書に『ライフサイクル・イノベーション』(ジェフリー・ムーア著、翔泳社刊)がある。


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