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“フラット化”の世界で日本が生き残るには

中国オフショア開発、勝ち組の証言(後編)

2007年04月23日 20時00分更新

文● 松本佳世子

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 ソフトウェア・システム開発企業の(株)アジェンダは、Ajaxを利用したWeb 2.0型グループウェア“GRESSO”(グレッソ)の開発を、中国オフショアで完成させた。中編ではオフショア成功の10の秘訣を取り上げたが、後編では日本のオフショア開発のあるべき姿を考える。



オフショア開発地としての中国の魅力は?


 アジェンダのオフショア開発に協力した(株)ビジネス・インフィニティの越川氏によれば、これから起こりうる問題はコスト上昇という。

 すでに、北京や上海/大連などの沿岸地は技術レベルが高く人件費も高い。したがって技術力を必要としない単純作業に関しては、レベルの高い仕事と工程を分けて、沿岸地から離れた地域へに発注した方が効率がいい。事実、今でも開発作業は上海で行ない、オペレーター作業は少し離れた青島に発注しているとのこと。

 北京や上海から放射状に離れるにつれて、人件費と技術レベルは低くなるので、低コストで進めるのなら中国以外の東南アジアでの開発の可能性も出てくる。だが、契約書などを現地の言葉にした場合、漢字の国であれば書いてある内容をおよそ把握できるので、日本にとってオフショア地としての中国の魅力は高い。

ビジネス・インフィニティは、米マイクロソフトと上海市の合弁会社である“上海微創軟件”(左)や、中国内のERPトップベンダーである“用友”の子会社である“北京用友軟件行程”(右)といった企業ともパートナー関係にある

 しかも、日本の技術者より遥かに安く雇えるだけでなく、新しい技術に対するポテンシャルの高さが大きな魅力の1つだ。浪潮(ランチャオ)世科信息技術の上海オフィスとオフショア開発を進めたアジェンダ社の千葉均氏はこう語る。

 『GRESSO』はAjaxを使ったり、Web 2.0型だったりと、非常にチャレンジャブルなソフトです。マイクロソフトがAjaxの正式版をリリースしたのは最近ですが、昨年からβ版を使って開発を進めてもらっていました。どこにも文献のない開発を成功させるためには、“やれる技術者”ではなく、“チャレンジしたい技術者”が必要だったのです。(千葉氏)

 中国でIT技術者といえばエリートで頭脳明晰な人々の集まり。その人々が、新しい技術を利用するとなると喜んで飛びついてくるという。技術に対する好奇心もあるのだろうが、何よりも、転職のときに新しい技術を知っていれば有利に働き、キャリアアップに直結するからという理由が大きい。このポテンシャルの高さを利用しない手はない。



日本企業が取るべき生き残りの道とは…


 さて今後、中国でのオフショア開発は、日本のソフトハウスにとってより重要度を増していきそうだ。千葉氏は「日本の企業は、中国の企業と競争するより、いかにいいパートナーになれるかを考えないと生き残れない」と力説する。

 今回、初めて外国人と仕事しましたが、非常に刺激的でした。技術者に会って仕事の内容を聞くと、「やはり世界は広いな」と感じます。まずは、そういう優秀な人たちが、中国には当たり前のようにいることを認識するところから始めないと。


 日本のIT企業の中には「いままで受けていた仕事を中国企業に取られて……」とライバル視する人もいるかもしれませんが、その考えは間違っています。それだったら「うちがもっといいものを作ります」と仕事を受けて、自分たちが中国にオフショア開発を頼めばいい話なのです。


 確かに中国企業の提示する価格は魅力的でしょうが、まだまだ日本人にしかできないことも多い。これからの日本のソフトハウスは、開発作業はどこでやってもいいという考えに切り替えないと生き延びられないのではないか(千葉氏)。



来たるべき“フラット化する社会”に向けて


 一方、越川氏も「中国IT企業の発展が、日本にとって脅威になるのは間違いない」と断言したうえで、パートナーになるべきだと進言する。

 「脅威だから見ないフリしよう」という態度では、どんどん斜陽になっていくだけです。相手の手の内を知り、違うやり方を考えて手を打っておく必要があります。


 見ないフリは一番よくない。言葉の壁さえなければ、時差を利用して世界規模で3カ所くらいで共同開発を行ない、寝ている間に他の場所で開発を進めれば3ヵ所なら3分の1の期日で仕上がる理論になります。


 日本の場合、顧客が特殊なのでうまくいかない部分もあるかもしれませんが、そういうとがった考えでわれわれが先にやるべきだろう、と思いますね(越川氏)。


 ネットワークとコミュニケーションの技術が発達したおかげで、今では世界中のどの場所にいる人間とも共同作業ができるようになった。この“フラット化”の時代において、日本のソフト業界が世界から取り残されないためには、アジェンダやビジネス・インフィニティのように積極的に海外にチャレンジしてみることがカギとなるのではないだろうか。

(了)


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