キヤノン(株)の“PowerShotシリーズ”の中で、入門・普及モデルにあたるのが“Aシリーズ”だ。コンパクトデジタルカメラとしてはホールドしやすいボディーや、アルカリ乾電池でも動作する手軽さ、マニュアル露出などカメラの基本が学べる各種撮影機能など、単に初心者に使いやすいだけでなく、撮影術を学んで高機能機や一眼レフカメラへとステップアップできる入門者向けの製品となっている。『PowerShot A570 IS』は光学式手ぶれ補正とともに最新の画像エンジンDIGIC IIIを搭載、顔認識機能を装備しているのが特徴だ。
光学式手ぶれ補正は2006年8月に発表された『PowerShot A710 IS』(関連記事)でも搭載されているが、A710 ISが光学6倍ズームレンズ搭載の望遠機だったのに対して、本機は光学4倍ズームというAシリーズとしてはスタンダードなレンズを搭載したコンパクト機となっている。
顔認識機能は顔にピントを合わせるAF、露出を合わせるAE、フラッシュ撮影時に発光量を調整するFEのほか、再生時には赤目現象を補正する機能も持つ(自動的に赤目部分を検出して赤要素を除去して表示するもので、記録データ自身は変更しない)。また、新画像処理によって高ISO感度でのノイズを低減し、最高ISO 1600相当での撮影が可能となった。
撮像素子に1/2.5インチ有効710万画素CCD、光学4倍ズームレンズという構成は今年2月発表の『PowerShot A550』(関連記事)を継承しているが、背面の液晶パネルは2インチから2.5インチに大型化した。光学式手ぶれ補正の搭載や液晶パネルの大型化にもかかわらず、ボディーは横幅で1.7mm小さくなっており、さらにコンパクトになった。液晶ディスプレーが大きくなったぶん、操作系は右側に圧縮されてやや小さめになったものの、光学ファインダーや上面のモードダイヤルなど、基本的な操作方法に変更はない。
顔認識・高感度などのほかにも細かな点で改良が施されている。“セーフティズーム”と呼ばれるデジタルズーム(撮影画素数が最大記録画素数よりも小さい場合ならばトリミングによって拡大)に加え、画像の中央部のみ切り出して記録することで1.5倍もしくは1.9倍に拡大する“デジタルテレコン”も新たに加わった。いずれも記録画素数を減らす代わりに擬似的に望遠とする点には違いないが、シームレスなズーミングによって画素拡大でどの程度画像が劣化するかが把握しづらいデジタルズームに比べ、画像のトリミングというシンプルさは理解されやすく、使い勝手もいい。
また、新たな機能としてイージーダイレクトボタンにISO感度切り替えやホワイトバランス設定などをアサインできる“ショートカット”が加わった。イージーダイレクトボタンはパソコンやプリンターと接続した際にワンタッチで画像を転送/印刷するためのものだが、撮影時は使われなかったことを考えれば機能の割り当ては当然の改良点とも言える。実際、他機種ではすでにイージーダイレクトボタンへの機能割り当てが行なわれており、最新モデルの『IXY DIGITAL 10』では必要なときのみのISO感度アップ、コンパクト機『IXY DIGITAL L4』では縦撮り用シャッターボタンとなる。それぞれカメラではターゲット層や用途も違ううえ、IXY DIGITALとPowerShotでは操作が微妙に異なる(カーソルの上下左右にアサインされた機能なども異なる)のだが、とはいえインターフェースが統一されていないのがやや気になった。