機能は豊富だがカメラとしての使い勝手はいまひとつ
最近のスリムコンパクト志向のCyber-shotシリーズからすると、大柄とさえ言えるボディーに加え、装備重量で約238gというずしりとした重さは、持ったときに存在感がある。ボディー前面にはホールド用の指掛かりなどはないものの、本体の厚みもあって意外や持ちやすい。レンズよりも左にボディーがあるため、両手でしっかりと持っても指がレンズ上で写り込まないのはありがたい。スライドをカシャっと開いて撮影。撮り終わったらバシャっと閉めるという感覚も、なかなか新鮮で面白い。
ただし、側面に設けられているスティックの操作のためには、どうしてもシャッターボタンに指をかけた状態から手を動かさなくてはならない。そのうえ側面からスティックを押し込む動作では、ボディーが動いてしまいやすいのが気になった。従来のCyber-shotで十字キーに割り当てられていた各種機能が、独自のキーになったのは確かに使いやすい。しかし、撮影系機能の操作パネルはスライドするパネルの裏に配置されたので、ボタン自体が薄い平面となっていて、ズームボタンも厚みがなく押し応えのないスイッチになってしまっている。ほかのキーはともかく、ズームの操作感はあまりよくない。
全般的な動作もややもっさりしている。スライドを開いてから撮影可能になるまで4秒強かかり、メニューの起動やカーソルの移動もタイムラグがあるのは、最近のクイックな起動をほこるコンパクトカメラの中ではかなり気になる。DSC-T100でも、カーソルアニメーション動作が軽快さを損なっていたが、G1では表示画素数が多くなったのも理由なのか、さらに重くなった印象だ。
撮影機能そのものは、操作系を除けば従来のCyber-shotと変わりがない。撮影時に縦に表示されるファンクションメニューを出したままでも、撮影後の写真を右側に並べて表示することもできる。またメニューを表示した状態でもファインダー画面は十分な解像度があり、被写体を確認しやすいのは大画面・高画素液晶ディスプレーならではと言える。
撮影品質に関しては、メリハリのある発色やエッジ処理など、従来からのCyber-shotの傾向とほぼ変わりない。周辺部の描写が甘くなるのもコンパクトな屈曲光学系でありがちだが、高コントラストなシーンでも偽色の発生などはうまく抑えられている。基本的にプログラムオートやシーンプログラムに任せて撮るコンパクトカメラであるが、逆光や室内などさまざまな状況下でも、とりあえずオートで撮っておけば大きく露出を外すことがないのは、Cyber-shotならではだろう。
撮影機能そのものよりもアルバム再生に注力したという、デジタルカメラとしてはかなり独特なモデルではある。しかし考えてみれば、カシオ計算機(株)の『QV-10』など最初期のデジタルカメラは、撮った画像をパソコンに転送して印刷したりやウェブページに載せるような使い方ではなく、撮ったカメラそのもので再生して見せ合うといった使い方のほうが、はるかに多かったのも確かだ。カラープリンターやブロードバンドインターネットの普及により、デジタルカメラは閲覧機能よりも撮影機能に比重を置いて進歩してきたわけだが、G1は再び、デジタルカメラならではの“見せる使い方”に回帰したとも言えるだろう。ポータブルプレーヤーで静止画/動画を手軽に楽しめるようになり、また一方でフォトビューアー専用機やデジカメ写真表示機能を持つ大画面テレビも増えるなど、デジタル写真の非パソコンベースで楽しみ方が広がる中で、デジタルカメラ側からの新しいアプローチとして捉えてみると面白い。
DSC-G1のスペック | |
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製品名 | Cyber-shot DSC-G1 |
撮像素子 | 1/2.5インチ 有効600万(総620万)画素CCD |
レンズ | 光学3倍ズーム、F値 F3.5-4.3、焦点距離 f=6.33~19mm(35mmフィルムカメラ換算時:38~114mm) |
静止画撮影 | 最大2816×2112ドット |
ISO感度 | オート、ISO 80/100/200/400/800/1000 |
動画撮影 | 最大640×480ドット、30fps、MPEG-1形式 |
ディスプレー | 3.5インチTFT、約92.1万画素 |
記録メディア | 内蔵 約2GBフラッシュメモリー、メモリースティックDuo/Pro Duo |
インターフェース | イヤホン端子、USB、AV出力、DC入力(クレードル) |
電源 | リチウムイオン充電池(NP-FR1) |
撮影可能枚数 | 約280枚 |
本体サイズ | 再生時:93.3(W)×25.3(D)×71.7(H)mm 撮影時:113.8(W)×25.3(D)×71.7(H)mm |
重さ | 約204g(本体のみ)/約238g(装備重量) |