18日から正式サービスが開始された“PASMO”。ICカードに電子マネー(SF)をチャージすることで、首都圏の電車や地下鉄、バスに乗車したり、PASMOやSuicaに対応した店舗で買い物ができるという優れものだ(関連記事)。
PASMOへのチャージは現金はもちろんのこと、クレジットカードから行なうことも可能だ。PASMOの特徴であるオートチャージ*1を利用するためには、対応クレジットカードの入手が必須になるため、この機会に新しいカードへの契約を考えている読者も多いことだろう。
しかし、ここで頭を悩ませられるのが、どのカードを使うかということ。カード会社は他社と差別化するために、独自の特典(ポイント制度やマイルなど)を設けており、この利用方法次第で、おトク度は大きく異なってくる。ここでは、PASMOを有効活用できる対応クレジットカードの選び方について紹介する。
*1 SFの残金が少なくなった際に、自動的に一定金額がクレジットカードからPASMOにチャージされる仕組み。チャージは改札を通るタイミングで行なわれる。
ポイントは大きく分けて4種類ある
まずは各社のポイントシステムに関して、簡単に説明しておこう。カード会社によってその内容は異なるが、大きく分けて4種類のポイントがあると考えればいいだろう。
- 乗車ポイント
- PASMOならではのポイント制度で、東京メトロ、小田急電鉄、京王電鉄の3社のカードが採用。自社の路線(他社の路線や定期券利用時は不可)を使用した際に、利用回数に応じたポイントが付与される。
- クレジットポイント
- 一般的なクレジットカードのポイント。クレジットカードの利用金額に応じて、一定の割合(0.1~1%程度)のポイントが付く。貯めたポイントは、商品や商品券などに交換したり、グループ内の店舗でショッピングに使える。ポイントをSFとして再チャージできるカードもある。
- 提携ポイント
- 特定の店でショッピングした際に貯まるポイント。鉄道会社の発行するカードで、系列百貨店を利用した際などに付与される。このポイントを通常のクレジットポイントとは別に発行されるので、よく利用する百貨店などがあれば、ダブルでポイントが貯まりおトクだ。
- マイル
- 種類はそれほど多くないが、航空会社提携カードを利用することで、マイルを貯めることも可能だ。また、航空会社提携カード以外でもポイント交換により、マイルを得られる場合がある。
ポイントを電子マネーとして“換金”できるカード
以下、PASMO対応カードのうち、特徴のあるものをセレクトして見ていくことにする。PASMOにチャージする電子マネー(SF)は、乗車料金以外にも、PASMO(またはSuica)に対応したコンビニや量販店、レストランなどで利用することができる。カードを使うことで得たポイントをPASMOにSFとして再チャージできると便利だ。
ほとんどのカードでは、ポイントの利用を提携グループのみに限定しているが、ポイントをPASMOに再チャージできるカードもある。対応するカードは現在のところ東京メトロ、京成電鉄、東急電鉄の3種類のみだ。いずれも貯めたポイントは1000ポイントにつき、1000円で再チャージすることが可能。1000ポイント未満ではSFにチャージすることはできない。
乗車ポイントが貯まるカード
PASMOの特徴といえる乗車ポイント。現段階で乗車ポイントを正式なサービスとして提供しているのは、東京メトロのみだ。小田急電鉄は6月に開始する予定で、京王電鉄は期間限定のキャンペーンとして乗車ポイントを提供している。
東京メトロが提供する『Tokyo Metro To Me CARD』では、1回の乗車につき、運賃に関わらず2メトロポイントが付与される。同カードは、上述のようにPASMOへの再チャージに対応するので、1000ポイントぶん貯まった時点で、1000円ぶんのSFとして、PASMOにチャージできる。仮に土日を除いて1日に往復1回程度、地下鉄を利用する人であれば、毎月80ポイント(40回ぶん)程度のポイントが貯まる計算になる。1000円ぶん貯めるためには13ヵ月必要となり、還元率はそれほど高くないが、利用範囲が広く、仕事などで地下鉄を利用する頻度の高い人には、比較的ポイントを貯めやすいカードと言えるのではないか。
一方、小田急電鉄の『OPクレジットカード』は、1ヵ月に小田急線に何回乗ったかでポイントが決まるシステムになっている。11~20回で3%、21~30回で5%、31回以上で7%の還元率となり、運賃×還元率が乗車ポイントとして付与される。1ヵ月に40回乗るとすると、初乗り運賃の120円でも、1年間で4032円ぶんのポイントが付く計算になる(120円×40回×12ヵ月×0.07=4032円)。OPクレジットカードで貯まったポイントは、SFに再チャージすることはできないが1ポイント1円として、小田急百貨店など、提携ショップで利用することが可能だ。
買い物でポイントを貯めやすいカード
上記2つはPASMOならではという部分だが、PASMOへのチャージ以外にもクレジットカードを利用するというのなら、ショッピングなどでポイントを貯めやすいカードを選ぶという選択もあるだろう。この場合、クレジットポイントや提携先の店舗でより多くのポイントが貯まるカードを選ぶとよい。
提携先の店舗でポイントが貯まるカードのうち、還元率が高いのはOPクレジットカード(小田急電鉄)と、京王電鉄の『京王パスポートカード』だ。
OPクレジットカードには約350ヵ所の提携先があり、ポイント還元率の高い小田急百貨店で買い物をすると、提携先の店舗で利用できる5%~10%のポイントが貯まる。還元率は、前年度の利用金額で決まる仕組みで、最大の10%還元を受けるためには、前年度の利用額が80万円以上であることが条件となる。また、提携ポイントとは別にクレジットポイントとして、200円につき1ポイントが付与されるのも特徴。ほとんどのカードが1000ポイント単位でしか利用できないのに対し、同カードは1ポイント(=1円)から利用できるのも便利な店だ。OPクレジットカードは、上述したとおり乗車ポイントにも対応しており、小田急線沿線で、対応店舗で買い物する機会も多いというのならおすすめしたいカードだ。
一方、京王パスポートカードは350ヵ所以上の提携先があり、還元率の高い京王百貨店では、5%から10%の“京王グループポイント”が貯まる。こちらも最大の10%還元を受けるためには、前年度利用が80万円以上である必要がある。クレジットポイントの還元率は0.5%で、こちらも提携店舗の買い物ではダブルでポイントが貯まる。クレジットポイントは1ポイントにつき、5ポイントの京王グループポイントに交換することができ、さらに1000ポイントの京王グループポイントは、1000円分の商品券に交換することが可能だ。
なお、これ以外のカードに関しては下表を参照してほしい。
発行会社 | カード名 | 提携先 | 提携先で貯まるポイントの還元率 |
---|---|---|---|
東急電鉄 | TOP&カード | 東急百貨店など | 3%から。前年度利用100万円以上で8% |
東武鉄道 | 東武カード | 東武百貨店など | 3%から。前年度利用50万円以上で7% |
京浜急行電鉄 | 京急カード | 京急百貨店など | 100円につき3ポイント |
西武鉄道 | プリンスカード | プリンスホテなど | 105円につき1ポイント |
京成電鉄 | 京成カード | リブレ京成など | 1000円につき10ポイント |
相模鉄道 | 相鉄カード | 相鉄ジョイナスなど | 1000円につき10ポイント |
マイルを貯めたい人にお勧めのカード
ANAマイルに直接交換できるのは、東京メトロのTokyo Metro To Me CARDのみ。ただし、パスモと三井住友VISAが提携して発行している『Pastownカード』も三井住友カードのポイント提携先にANAマイルがあるので、交換は可能だ。ただし、Pastownカードで貯めたポイントをマイルに移行するには手数料6300円がかかる。
Tokyo Metro To Me CARDには現在16ヵ所の提携先がある。ポイント還元率はそれぞれ違うが、例えば三越で買い物をすると、1000円につき5ポイントぶんのメトロポイント、さらにクレジット決済で1000円につき1ポイントぶんのクレジットポイントが貯まる。ポイントは、200クレジットポイント=1000メトロポイント=600マイルで交換することが可能。
JALマイルに関しては、年会費無料のPASMO提携カードでは貯めることができず、JALと提携した年会費がかかるカードが必要だ。小田急電鉄の『JALカードOPクレジット』と東急電鉄の『JALカードTOP&ClubQ』が対応する。
JALカードOPクレジットは、年会費が2100円かかるが、そのぶんマイル取得率はかなり高い。ポイントシステムはOPクレジットカードとほぼ同じで、前年度の利用額に応じて提携先で5%~10%のポイント、最大7%の乗車ポイントが付く。ポイント交換比率は2000ポイント=1000マイルだ。これ以外にも、クレジットカードで200円につき1マイル貯まる。
一方、JALカードTOP&ClubQは約500ヵ所の提携先があり、ポイント還元率の高い東急百貨店で買い物をすると、3~8%のTOKYUポイントが還元される。クレジット決済でさらに200円につき1マイル貯まり、2000TOKYUポイントを1000マイルに交換できる。どこで買い物する機会が多いかで選択すればいいと思うが、提携先でのポイント還元率は小田急電鉄のほうが高く、よりマイルを貯めやすそうだ。
なお、上記3枚のJAL/ANA提携カードで比較すると、有料であるぶん、総じてJALカードのほうがマイルを貯めやすい印象だ。使い方にもよるが、編集部の試算(毎月提携店で5万円、オートチャージに6000円使った場合)で、4倍近い差が出るケースもあった。
最適なカードは人によって違う
このように、PASMO提携カードから、編集部として注目したいカードの特徴をいくつか見てきた。しかし、どのカードが一番おトクになるかは、その人のライフスタイル次第で変わる。よく買い物をする人は、提携先で貯まるポイントの還元率で選ぶのがいいだろうし、1日に何度も電車に乗るような営業マンなら乗車ポイントの有無、旅行好きなら、マイルが貯まるかどうかに注目……といった具合に、自分に最適なカードを見つけてほしい。
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