富士通(株)は5日、ワンセグ(携帯機器向け地上デジタル放送)の方式を利用した、映像・音声の短距離配信システム“スポットキャスト”の技術発表会を同社で開催した。
スポットキャストは微弱なUHF電波を発信する送信機により、その周囲1~2mの範囲で受信可能な“ローカルな”ワンセグ放送を行なうというもの。映像・音声の送信はもちろん、BML(地上デジタル放送などで採用されているデータ放送用記述言語)によるデータ放送も可能となっている。なお、今回は技術発表で、実際の製品・サービスについてはこれから考えていくとのこと。しかし同社では夏ごろには製品化したいとしている。
今回開発されたワンセグ専用送信機は、幅180×奥行き190×高さ43mm(アンテナ含まず)、重量約1.5kgと、放送システムとしては非常に小型となっている。この送信機には、同社自社開発のワンセグ専用変調LSIが採用されており、ワンセグ限定の仕様にすることで消費電力を半減。また微弱電波の送信に限定することで増幅器の消費電力も低減でき、この結果送信機の小型化が可能になったという。
さらに、(株)富士通研究所が開発したIP映像伝送装置『IP-9500』にも採用されている、独自のH.264圧縮アルゴリズムにより高い映像品質を実現しているという。配信データはUSBストレージに保存し、送信機のUSBコネクターに接続することで配信できるほか、送信機には有線LANコネクターも備わっており、ネットワーク経由での配信も可能となっている。
スポットキャストの主な用途としては、店頭に送信機を設置しての告知映像・音声の配信や、観光施設での多国語解説、CD/ビデオショップでの新着情報やプロモーションビデオ配信、駅やターミナルでのタウン情報やイベント情報配信などが考えられるという。
富士通のネットワークサービス事業本部長 経営執行役の川妻庸男(かわつま つねお)氏は、スポットキャストについて「一般の人たちがネットワークに威力を感じ、すごいな、と思う状態を作りたい」と語り、その上で「(ユーザーなどと)新しいビジネスモデルをお互いに作っていきたい」とした。
なお、発表会場では実際の放送デモも行なわれた。手持ちのワンセグケータイで受信を試してみると、まずはケータイ側でチャンネルのスキャンを実施して送信機を発見するという作業が必要となる。その上で、送信機の設定チャンネル(デモでは11ch)にチャンネルを合わせることで放送を見ることができる。送信機を複数揃えれば、同時に複数チャンネルの配信が可能だ。