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林信行のマイクロトレンド 第3回

米国で盛り上がる“OpenID”

2007年03月02日 13時14分更新

文● 林信行 (ITジャーナリスト)

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Yahoo!は第2のPassportになるのか!?


 米ヤフー(Yahoo!)社は、以前から同社のサービスの登録ユーザー数の多さが同社の重要な資産だと主張している。

 Flickrやブックマーク共有サービスの“del.icio.us”、ブログSNSの“MyBlogLog”といったインターネットの注目サービスを次々と買収しているヤフーだが、これらのサービスの間でもIDの統合が始まっているようだ。Flickrのユーザーには3月15日までに米国のYahoo! IDに切り替えるように案内が送られている。

 今後はほかのサービスでも、同様のID統合を行なうことだろう。これによりOpenID同様のシングル・サインオン──1度、ログインすれば必要なサービスがすべてID/パスワードの入力なしに利用できる快適な環境が整う。

 検索サービスやコンテンツサービス、販売サービス、モバイルサービスといったサービスの枠を超えたシナジー効果も期待できる。

 Yahoo!ほど多くの登録ユーザーを抱えるサービスでは、OpenIDを受け付ける必要性もそれほど感じないというのはよく分かる。だが、それだけ多くのユーザーが参加し、その受け皿となるサービスも持つYahoo! IDが、ほかのサービスで使えたらさぞかし便利だろう。



Yahoo!のIDをOpenIDとして使う裏技も


 実はこの夢を現実に変える“IDProxy”というサービスがすでにある。このサービスを使えばYahoo! IDOpenID対応サービスで使えるようになるのだ。ヤフーは今のところこのサービスを黙認している。

“IDProxy”

Yahoo! IDをOpenID対応サービスで使えるようにする“IDProxy”

 ユーザーを自社の生態系に取り込もうと狙っているのはヤフーだけではない。最近では米グーグル(Google)社も、さまざまな場面で“Google ID”を要求するようになった。

 今後、検索サービスではユーザーの趣向を理解し、望み通りの結果を提供する“パーソナライズド検索”がますます重要になってくる。そのためにはユーザーのプロフィールを掌握し、インターネット上での活動を把握することは重要だ。

 実は前述したOpenID対応会社の中にも、同じ考えの会社は多い。例えばAOLも、ユーザー数の多い同社のID情報を、他社サービスのログイン用に貸し出すことは容認していても、他社のIDでAOLにログインすることは容認していない。いわゆるIDプロバイダーとしての対応を表明しただけだ。

 とはいえ、シングル・サインオンはユーザーにとっても、新興のサービスにとっても極めて大きい価値を提供する。今後、ID共通化の流れはますます勢い付くはずだ。

 今後は日本にも少しずつこうした流れが入ってくることだろう。もしかしたらその時こそ、mixiと競合しうるSNS連合をつくるチャンスかもしれない。


筆者紹介-林信行

著者近影 - 林信行さん

 フリーランスITジャーナリスト。ITビジネス動向から工業デザイン、インタラクションデザインなど多彩な分野の記事を執筆。『MACPOWER』『MacPeople』のアドバイザーを経て、現在、日本および海外の媒体にて記事を執筆中。マイクロソフト(株)の公式サイトで執筆中の連載“Apple's Eye”で有名。自身のブログ“nobilog2”も更新中。オーウェン・リンツメイヤーとの共著で(株)アスペクト刊の『アップルコンフィデンシャル(上)(下)』も発売中。



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