米アップル社の最高経営責任者(CEO)、スティーブ・ジョブズ氏は6日、同社のウェブサイト内で“Thoughts on Music”と題した書面を公開。アップルがiTunes Storeの音楽販売で独自のDRM(Digital Rights Management)技術“FairPlay”を採用する背景を説明しながら、DRM技術をめぐり考えられる3つの将来象を指摘している。
この書面はスティーブ・ジョブズCEOの署名入りで、アップルのDRMに対する見解をつづっている。
iTunes Sotreで購入した音楽ファイルは、FairPlayによって保護されているため、iPodもしくは5台のコンピューターでしか再生できない。アップルには、iTunes Storeで購入した音楽を、他社製のポータブルプレーヤーでも再生できるようにするため、FairPlayの仕様を公開するように求める声が寄せられるという。
これに対してジョブズは、iTunes Storeで販売している音楽は、ユニバーサル、ソニーBMG、ワーナー、EMIからライセンスを受ける際に、認証されていないデバイスで再生できない仕組み(FairPlay)を導入することが条件だったと明かし、プロテクトを解除するソフトウェアなどの開発につながる可能性の高いため、仕様は公開できないと説明。
その上で将来のDRMのあり方に関して、ジョブズは以下の3つの見解を示している。
- 独自の音楽販売サイトと対応プレーヤーを提供する現状の維持
- 新規参入企業へのFairPlayのライセンス供与
- DRM技術の全面的な廃止
2006年度のiPodとiTunes Storeの売り上げ総数と、独自調査によるiPodユーザーの楽曲の所持数から算出して、iPodユーザーがiTunes Storeから楽曲を購入する割合はiPod内の全楽曲に対して3パーセント程度と推定。そのため現状を維持したとしても、ユーザーが楽曲を追加する際の利便性の妨げになる可能性は低いと指摘する。
その一方で2006年に販売された音楽の総数は、iTunes Storeからの配信数が2億曲に対し、CDの売り上げ枚数は20億枚。CDにはDRM技術は搭載されていないため違法コピーが容易で、全体で見れば一部にすぎないダウンロード販売の楽曲のDRM保護は無意味だと言う。
さらに、DRM技術がなくても楽曲のダウンロード販売事業へ参入できるようになれば、健全な市場の拡大にも有益だと意見している。
なお、音楽配信事業に新規参入する企業に対してFairPlayをライセンスするという可能性については技術面での秘密保持や情報がリークした場合の対応において問題が多いと述べており、このシナリオが実現する可能性は低そうだ。
