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第3回 国際水素・燃料電池展“FC EXPO 2007”レポート

バイクや車は当たり前。ゴジラもニンテンドーDSも燃料電池で!

2007年02月07日 21時43分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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“FC EXPO 2007”の会場

“FC EXPO 2007”の会場の東京ビッグサイト

米国の元副大統領が映画や書籍を通じて警告しているように、地球環境に対する関心が急速に高まっている。そうした時流を追い風にしてか、東京・有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で7日に開幕した“第3回 国際水素・燃料電池展(FC EXPO 2007)”には、過去最多となる462社・者(前回は404社・者)が参加し、賑わいを見せている。主催はリード エグジビション ジャパン(株)で、会期は9日までの3日間。

会場には、燃料電池を構成するセルや触媒、水素供給源となる水素吸蔵合金やエタノール、バイオ原料など、開発・製造に関する展示が数多いが、中にはそれらを活用した将来の乗り物や携帯機器なども展示され、来場者の注目を集めていた。

“FC EXPO 2007”の会場

近藤科学の二足歩行ロボットを燃料電池で駆動

燃料電池の学習キット

太陽電池で水を電気分解して得た水素と酸素で、燃料電池を動かす学習キット

学校/官公庁/科学館/博物館などの公共機関や企業の研究所向けの販売を行なう、岐阜県のスペース・デバイス(株)は、近藤科学(株)の二足歩行ロボットを燃料電池で稼動させるデモや、燃料電池の原料となる水素を太陽電池で生成(水を電気分解)するという学習キットなどを展示していた。この学習キットはドイツ製で、価格は2万5200円。100ページの英文テキストと86ページの日本語テキストが付属する。

MEAの自作キット

燃料電池の心臓部、MEAの自作キット

焼酎でも動く燃料電池

同じ大同メタル工業が展示していた、焼酎での燃料電池の駆動デモ。アルコール度数12%、2ccの焼酎で2時間以上の連続動作が可能という

また、同社も販売を行なっているが、燃料電池の心臓部にあたる“MEA(Membrane Electrode Assembly:膜・電極接合体)”の組み立てキットが大同メタル工業(株)のブースに展示されていた。MEAとは、水素と酸素を供給して触媒を通じて電気を取り出す部分で、一般的な燃料電池の学習キットは、これをあらかじめ組み立て済みの部品として利用するだけだが、大同メタル工業のMEA組み立てキットは、触媒(白金粉末)や膜(固体高分子樹脂)を任意に増減させることで、得られる電力の違いを実験できるキットになっている。MEAのサイズは40×40mmで価格は16万8000円。原料となる水素タンクと空気(酸素)供給のボンベは別売(3万8000円)。販売先は主に学校や研究機関などだという。

燃料電池で動くゴジラのラジコン

「水爆から生まれたゴジラが、水素で動く!」のコピーは秀逸!

スペース・デバイスの隣にブースを構える、小型燃料電池セルを開発・製造する(株)FC-R&Dは、マイクロ燃料電池の活用事例として、ゴジラのラジコンやペット犬ロボットを燃料電池で動かして来場者を楽しませていた。

燃料電池スクーター

Taigene Electronic MachinaryとAPFCTの燃料電池スクーター

足の下には3本の燃料電池スタックが

足元に燃料電池スタック(水素吸蔵強引を充填したタンク)3本が収納される

このほか、昨年のFC EXPOでも展示されていたが、バイクや自動車への燃料電池の応用は、各社がこぞって注力しており、会場にも多くのデモ機が展示されていた。台湾のTaigene Electoric Machinary社と台湾Asia Pacific Fuel Cell Technologies(APFCT)社が共同で展示したFCスクーターは、台湾北部の新竹市で走行試験を行なった模様をビデオで見せ、実用性の高さをアピールしていた。スクーター本体はTEMが、スクーターに乗せる小型の燃料電池スタック(水素供給源)はAPFCTがそれぞれ開発したもので、スクーターの足元に当たる部分に3本のボンベ(中身は水素吸蔵合金)が収納されている。

ニンテンドーDSやスマートフォンにも燃料電池が! 残念ながら非動作のモックアップではあるが、着眼点が面白い

APFCTのブースには、このほかにも小型燃料電池スタックの活用事例として、ニンテンドーDSやスマートフォンに装着して稼動できるというコンセプト展示を行なっていた。あいにく実動はしないモックアップばかりで、実用化のためには燃料電池セル側の小型化も必要なため、すぐにでも燃料電池の小型携帯デバイスが登場する、というわけではなさそうだが、身近な電気製品が次々に燃料電池に置き換わるというコンセプトはなかなかユニークだ。

同じく東京ビッグサイトでは
NET&COM 2007も開催中

“NET&COM  2007”の会場

“NET&COM 2007”も同じく東京ビッグサイトで開催中

FC EXPO 2007は東1~3ホールを使って開催されているが、その向かい側の東4~5ホールでは、情報システム/ネットワーク/セキュリティーの総合展示会“NET&COM 2007”が開催されている。主催は(株)日経BPで、会期は同じく9日までの3日間。

展示内容は、業務システムに関連した情報セキュリティーや、ネットワークの活用によるコスト削減など、情報システムや経営者向けとなっている。そんな中で、WiMAX(IEEE 802.16e、高速無線伝送技術)で今年、携帯電話業界に新規参入を予定している(株)アッカ・ネットワークスのブースに面白い展示があった。

展示していたのは(株)U'eye Designという企業で、ユーザビリティーテストやユニバーサルデザインの観点を踏まえたユーザーインターフェースの提案・開発を行なう会社だ。同社はKDDI(株)のau携帯電話機のリファレンスデザイン開発にも参画しており、京セラ(株)など複数の携帯電話機メーカーのメニューデザインなどを手がけている。

男性、女性を強く意識したコンセプトモデル

男性、女性を強く意識して開発された携帯電話機のコンセプトモデル

高齢者向けのコンセプトモデル

まるで電卓のような、大きな液晶パネルとボタンが用意された高齢者向けのコンセプトモデル

同社が展示していたのは、既存の携帯電話機に対するアンチテーゼ(反定立)ともいうべきコンセプトモデルで、例えばお年寄りにもっとメールや電話が使いやすいモデル、あるいは男性/女性を極端に意識したモデルなど、既存の概念にとらわれない自由な発想の端末(モックアップ)がメッセージとともに展示されていた。同社はアッカ・ネットワークスの携帯電話機参入に直接関わるわけではない(アッカから同端末が発売されるわけではない)とのことだが、「あえて都市部ではなく地方から参入する」というアッカの携帯電話事業と同様に、マスではなくニッチでも確実に需要のある市場を目指すコンセプトは両社に通じるものがあると感じた。

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