パンドラの箱は開かれた
最近になって米国のUSA TODAY紙の報道で、アップルは2年前までは2番手のキャリアとも組む用意があったことを明かした。
2番手のキャリアのベライゾン(Verizon)社は、日本の2番手であるauのように「とんがったこと」ができる会社だ。だが、そのベライゾンも、アップルとの契約条件が見合わなかったという理由でiPhone発売の契約をみあわせたという。
条件には通信費の売り上げの1%をアップルが得ること、製品の販売や展示方法についてアップルの意見を通せること、顧客と製品の接し方についてもアップルの意見を通せること、といったものが含まれていたという。いずれもこれまでの携帯電話メーカーには前例のなかったことで、ベライゾンもさぞ躊躇したことだろう。
だが、シンギュラーがアップルの条件をのみ、パンドラの箱を開いたことで、携帯電話の世界にも、新しい文法が作られることになる。
これから先の携帯電話機メーカーは本当にちゃんとしたアイデンティティーをもっていないと、1999年頃のiMac以外のパソコンと同じになってしまい、2年とたたないうちに、世の中から忘れ去られる存在になってしまう。
さて、日本の携帯電話業界はiPhoneをどう受け入れるのだろうか。日本の音楽、テレビ業界のように、鎖国令や骨抜きにした条件で契約を結ぶという手もあるかもしれない。
だが、そんなことをしても日本の携帯電話業界が海外に遅れをとるだけで、ユーザーのためにも、企業の長期的展望のためにも決していいことではない。
*iPhone発売後のコラム「なぜiPhoneは人々を熱狂させるのか?」はこちら
筆者紹介-林信行
フリーランスITジャーナリスト。ITビジネス動向から工業デザイン、インタラクションデザインなど多彩な分野の記事を執筆。「MACPOWER」「MacPeople」のアドバイザーを経て、現在、日本および海外の媒体にて記事を執筆中。マイクロソフト(株)の公式サイトで執筆中の連載「Apple's Eye」で有名。自身のブログ「nobilog2」も更新中。オーウェン・リンツメイヤーとの共著で(株)アスペクト刊の「アップルコンフィデンシャル(上)(下)」も発売中。