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写真家向けソフト 『Photoshop Lightroom』が正式版に──アドビ初“パブリックβ”の効果はいかに!?

2007年01月31日 12時00分更新

文● 諫山研一

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『ADOBE PHOTOSHOP LIGHTROOM』のパッケージ写真

『ADOBE PHOTOSHOP LIGHTROOM 1.0』

アドビ システムズ(株)は30日、RAW現像機能を備えたプロカメラマン向け画像管理ソフト『ADOBE PHOTOSHOP LIGHTROOM 1.0 日本語版』(以下、Lightroom)を3月23日に発売すると発表した(関連記事)。

価格は通常版が3万3600円、ダウンロード版が3万2000円、アカデミック版が1万1340円。各製品はWindows/Macintoshの両ソフトが含まれるハイブリッド仕様だ。正式版の発売を記念し、7月5日までの期間限定で、通常版が2万3100円、ダウンロード版が2万2000円で購入できるキャンペーンを実施する。


約1年間、パブリックβを提供

Lightroomは、写真家の負担を減らすことを目的として新たに開発されたソフト。大量の画像の整理、RAW現像、簡単な画質調整といった管理/編集に加え、スライドショー、プリント、ウェブページへの書き出しといった写真を活用するための機能も備えている。

Lightroomのメイン画面

Lightroomのメイン画面。パブリックβと比べて、機能/インターフェースともに洗礼された印象だ

2006年1月より専用サイトにてパブリックβ版を公開し、ベータテスターのフィードバックを受けて機能をブラッシュアップしてきた(関連記事参照、β3β4)。同社のプリントパブリッシング部 フィールドマーケティングマネージャー、栃谷宗央(とちやむねお)氏によれば、パブリックβ版は世界で50万人以上の人間にダウンロードされたという。

RAW現像機能では、『Adobe Photoshop CS2』譲りの“Camera Raw”と同じエンジンを使用。現像品質に加え、150機種/140 種類以上のRAWフォーマットに対応するなど魅力的な点が多い。なお、β版ではMacintoshとWindowsで機能に若干の差があったが、製品版では同等となっている。


ゴミ取りなど、正式版でも新機能を採用

製品版ではパブリックβユーザーの意見を反映させ、いくつかの機能が追加された。β4との機能差で一番に注目したい点は、昨年11月に行なわれたイベント“Photoshop World”(参考記事)の基調講演でも少し触れられていた“コピースタンプ/修復”ツールが搭載されたこと。

これにより、例えばカメラのローパスフィルターに付着したゴミによって発生した影などのレタッチを、Photoshopを使わずにLightroom内で行なえるようになった。このコピースタンプ/修復ツールは、コピー元/コピー先の設定の組み合わせを保持して、複数の画像に対して適用(バッジ処理)することも可能だ。

コピースタンプ/修復

“コピースタンプ/修復”は、機能的にはPhotoshopのものと変わらないが、修正の履歴が画面に残り、あとから取り消すことも可能だ

画像の管理方法も進化した。例えば、検索用のキーワードをスタンプ化し、“ライブラリ”上の画像をクリックしていくだけで、キーワードを設定できるようになった。

同じ日に撮影したカットなど、任意の画像をサムネイル上でひとつにまとめられる“スタック”機能も追加され、ライブラリの写真が増えてきたときでも見た目をある程度整理できる。

似たようなカットをひとまとめにする“スタック機能”も搭載。スタックを選択すると、サムネイルの左上にスタックした枚数が表示される

画像の書き出し時に選べるようになった“書き出した画像をディスクに書き込む”オプションは、選んだ写真をCD/DVDで納品するときに役立つだろう。

CD/DVD書き出し

納品時に便利な“書き出した画像をディスクに書き込み”オプションも追加された

画像の編集時には、編集結果を一時的に保存する“スナップショット”が利用できるようになった。パブリックβ版より備えていた、編集履歴を記録して、以前の状態にすぐに戻せる“ヒストリー”機能と合わせて、現像作業の効率化がはかれる。ちなみにヒストリー機能は、Photoshopとは異なり非破壊編集で、Lightroomを終了/再起動したあとでも履歴が残っている。

“Web”モジュールでは、写真をFlash形式のギャラリーで書き出す場合、パブリックβでは1種類のみだったテンプレートが増えているほか、FTP機能なども追加された。

β版から引き継いだ特徴としては、例えば画像を補正する際、ヒストグラムをマウスドラッグで動かし、直感的な操作で色や明暗を調整できるという点などが挙げられる。

ヒストグラムのドラッグ

より直感的な操作を実現するため、さまざまな工夫がなされている。例えばヒストグラムをマウスドラッグして画像の調整を行う事が可能だ


カメラマンだけでなく、デザイナーや編集者も注目

本ソフトはPhotoshop CS2と競合する点がいくつかあるが、Lightroomの想定ユーザーはあくまでプロの写真家で、フィルターなどで画像を大きく加工する作業までは想定されていない。

ただし、Lightroomのライブラリから指示を出してPhotoshopで画像を開くといった連携機能も備わっているため、ファイルの管理は主にLightroomで、編集が必要になればPhotoshopを利用するといった使い分けが可能だ。

実際、新しいバージョンを使ってみて思ったのは、プロカメラマンにおける通常のデジタルカメラの撮影ワークフローなら、Photoshopを立ち上げずに、Lightroomだけで作業が成り立つということ。インターフェースも整理されていて扱いやすい。

同社はもちろんプロカメラマンに使ってほしいだろうが、例えばさまざまなRAWデータを扱う機会の多いデザイナーなら画像管理とRAWイメージ変換ツールとして役立つだろう。

また編集者なら、ちょうど撮影したポジをライトテーブルに置いて実際に使うカットを選ぶといったような、写真のセレクションにも使える。そう言う意味では幅広いユーザー層にアピールできる一本だ。

画像の管理、およびRAW現像という非常に面倒だった作業が、普通の画像管理ソフトを扱う感覚で実行できるということは、今後、ますます増えるであろうデジタルカメラベースのワークフローにとって、とても大きな変化が起こったと言える。

ノート型パソコンでもサッと起動して使えるため、少なくともロケ先で無駄な時間を使う必要がなくなるだけでも、カメラマンにとっては大きなメリットなのだ。

アドビとしては初のパブリックβによる公開テストによってフィードバックとアップデートを重ね、ようやく正式版が登場したLightroom。正式版の前にあえてユーザーにソフトの内容を問うという試みの成果が早くも現れた、“ユーザーに優しい”仕様になったと言えるだろう。

対応OSは、Windows XP(SP2)、Mac OS X 10.4以上。今回のバージョンではWindows Vistaは非サポートだが、記者発表会では今後いずれかのタイミングで対応することが明らかにされた。

対応機種は、Pentium 4クラスのCPUと768MB以上のメモリーを備えたPC/AT互換機、PowerPC G4/G5、またはCore DuoのCPUと768MB以上のメモリーを備えたMacintosh。

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