ケーブルの呪縛から逃れるのだ
いきなりで何だが、デジタル機器を使うなら、ケーブルはないほうがいいに決まっている。
リモコンなどは言うまでもなく、インターネットも、キーボードもマウスも、ケーブルがなければ機器の利用範囲が広がるし、何より見た目がスッキリする。ユーザーにとってワイヤレスは、とても分かりやすいメリットなのだ。
とはいってもケーブルの呪縛に捕われている機器はまだまだ多く、ヘッドホンを使うiPodも例外ではない。カバンの中にiPod本体を入れて聴こうとすると、ケーブルの長さが足りないとか、ケーブルがどこかに引っかかってiPodから抜けてしまうとか、とにかく邪魔になってしまう。やっぱりヘッドホンをワイヤレス化したいのだ。
そこで今回は、プリンストンテクノロジー(株)の『PTM-BHP4』に注目してみた。通信方式にBluetooth 1.2を採用し、オーディオアダプターをiPodのDock端子に接続し、しこから専用のヘッドホンアダプターにBluetooth経由で音楽を飛ばして、ワイヤレスで聴けるという製品だ。
iPod向けのワイヤレスヘッドホンといえば、これまでも(株)ロジクールやブルーテークジャパン、ラトックシステム(株)などが製品を投入してきている。ユニークなところでは、「iPodをヘッドホンに差せばワイヤレスに!!」という逆転の発想(?)の製品もあった。
そうした製品と比べると、PTM-BHP4は以下の3点を兼ね備えているのが特徴だ。
- 好きなヘッドホンを使える(既存製品は大半がヘッドホン一体型)
- ワイヤレスで選曲操作を指示できる
- iPod以外に携帯電話機ともペアリングして通話に使える
要するに「ヘッドホンは今使ってるカナル型じゃなきゃ嫌。あと、曲をスキップするためにカバンからiPodを取り出すのは面倒だから、操作もワイヤレス化したい」──というワガママな要望に応えてくれる製品というわけだ。
ちなみにモバイルキャスト(株)の『iPod Bluetooth Transmitter (MPXAD500RI)』と『mLink R (MPX3000R)』を組み合わせても、上記の3要素を実現できる。
iPodの操作もリモコンからワイヤレスで指示
本機を実際に使ってみて、まず感じたのがセットアップ手順が簡単ということ。オーディオアダプターをiPodに差し、ランプが点灯したらヘッドホンアダプターの電源をオン。あとはiPod側で再生を始めれば、曲が聴こえるようになる。唯一守らなければならないのはこの手順で、ヘッドホンアダプターの電源を先に入れると同期がうまくいかない場合があるので注意したい。
あとは、ワイヤレスの快適さを満喫するのみ。通勤時だったら、オーディオアダプターをつないだiPodはカバンに入れ、ヘッドホンアダプターは背面のクリップで胸などに留めておけばいい。屋内で使うときならiPodを机の上に置きっぱなしにして、仕事や家事をしながら音楽を楽しめる。
無線の範囲を調べてみると、リュックサックにiPodを入れて聴くのはもちろんOKで、アスキー社内では10mくらいまで届いた。また自宅では、トビラをまたいだ隣の部屋でも聴くことが可能だった。
PTM-BHP4のオーディオアダプターで指示できるのは、前後の曲へのスキップ、ボリューム調節、一時停止/再生の5種類。音楽を流しながら数秒ずつ早送り/巻き戻ししていく操作には非対応だ。リモコンでiPodのメニュー画面を操作できるわけではないので、“曲をシャッフル”(ライブラリの全曲をシャッフル再生)で音楽を流しつつ、今は聴きたくない曲があったらサクサク飛ばしていくといった利用スタイルに合うだろう。同じトラックを繰り返し聞く英会話学習にも使えるかもしれない。
先の特徴でも挙げていた、携帯電話機との使用もまずまずだ。別途、検証用に借りていた『Nokia E61』とペアリングしてみたが、iPodで音楽を聴いているときに電話を受けると再生音がストップして着信したことが分かる。この状態でヘッドホンアダプターの電源ボタンを押すと、通話できるようになる。
軽く検証した限りでは、通話時の音質は聞き取りにくいということはなかった。ただし、通話時はにはヘッドホンアダプターを口元に持っていかないといけないのが少々恥ずかしい。機能自体は十分なのだが、ちょっと人目が気になる。ちなみに、E61では電話機側にメールが届いた際でも、再生中のiPodの音楽が中断されるので、着信音をオフにしていてもわかる。