このページの本文へ

アスキービジネスセミナー「2006年IT投資動向を振り返って」を開催

2006年12月08日 00時00分更新

文● アスキービジネス編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

アスキービジネスは、12月6日、東京・箱崎で、「アスキービジネスセミナー 2006年IT投資動向を振り返って ~2007年 企業のIT化を推進する販売戦略とは~」(協賛:日本アイ・ビー・エム株式会社)を開催した。ここでは、当日のプログラムに沿ってその模様をレポートする。

好景気を反映し、IT投資意欲が高まる

 セミナーでは、まずアスキービジネス編集長の大島伸一が登壇し、「2006年のIT投資動向と2007年のトレンド」と題した基調講演を行なった。これはアスキービジネスによる調査を元に、中堅・中小企業が2006年にどのようなIT投資を行ない、2007年にはどのような投資を予定しているかをまとめたもの。

 2006年のIT投資動向の特徴は、4割近い企業がITへの投資額を2005年に比べ増加さてていること、そして、その投資先としては情報セキュリティ分野が25.5%と高い数値を示していた。「好調な景気を反映してIT投資意欲が増している。さまざまな情報漏えい事件が起き、日本版SOX法の施行を前に、多くの企業が情報セキュリティへの投資を行なっていた」(大島)

アスキービジネス編集長 大島伸一

アスキービジネス編集長 大島伸一

 現状のIT投資に対する不満点として回答が多かったのが、「自社の人材不足」(53.5%)。投資が増えた結果、導入されたものに対応するネットワークやセキュリティに関する知識を持った人材が不足している結果が明らかになった。

 また、内部統制や日本版SOX法に未着手の企業が52%と過半数を超え、レガシーシステムを稼動させていることが35%という数値になったことを受け、「社会的関心を考えれば、上場企業以外も内部統制やSOX法対策を進めていくだろう。レガシーシステムに関しても、2007年問題での団塊の世代大量退職を受けて、システムのリプレースが進むものと思われる。この2つは今後数年の大きなビジネスチャンスになりうる」(大島)と指摘した。

 政府が進めるIT投資関連の税制(情報基盤強化税制など)に関しての調査も行なっており、過半数を超える企業が認知しており、29%の企業がそれらの活用や検討を予定していると答えた。

 2007年への展望として挙げられたのは、さらなる投資意欲の向上。とりわけ、投資目的の調査において、2006年と同様に情報セキュリティへの投資を予定している企業は多いものの、顧客管理や営業支援といった利益につながる「攻め」の投資を意識している企業も増えた。これらを踏まえ、大島は「景気の回復で投資意欲が高まっている。まだ多くの企業が問題としている人材不足や、未着手・未対策になっている内部統制やレガシーシステムなどを顧客に対する提案の切り口にしていけば、さまざまな税制の利用を絡めることで、中堅・中小企業への開拓が可能になる」とまとめた。

経営につながる提案が中小企業へのIT提案の秘訣

 第2部では、アスキービジネスの執筆陣によるトークセッションが行なわれた。モデレータとして、平林公認会計士事務所所長の平林亮子氏、パネリストとしては、「大田区スタイル」の著者である株式会社ウイル代表・奥山睦氏、エムズネット代表でSE出身のITコンサルタント三好康之氏、アスキービジネス編集長・大島伸一の合計4名が登壇した。

平林公認会計士事務所所長 平林亮子氏

平林公認会計士事務所所長 平林亮子氏

 奥山氏は大田区の製造業におけるIT投資の動向を「従業員9人以下の小規模な製造業が多い大田区では、企業単独での大規模なIT投資はなかなか難しいが、行政が用意した施策を元に複数の企業が元になったECサイトの構築や共同受発注サイトが立ち上がっている。また、効率的な生産管理システムを導入して利益率を大幅にアップさせた企業が注目され、行政がその事例をセミナーで取り上げるなど積極的にアピールしている。このような地域のITコアリーダー企業を調べることで、ITの促進が図れるのではないか」と語った。

株式会社ウイル代表 奥山睦氏

株式会社ウイル代表 奥山睦氏

 中小企業へのIT導入をコンサルティングする立場の三好氏は「中小企業がお金を持っていないという考えは大きな間違い。中小企業の経営者の投資意識は高い。ただ、大企業と違うのは、経営者にとって、人を増やすことや社員教育をすること、設備の導入と同じレベルの選択肢にITがある。ベンダーやSIerが『PCを入れましょう』というだけでは話にならない。経営者を相手にIT投資を行なわせるには、経営にITがどう寄与するかを話す必要がある。そういった意味では、中小企業への営業は、大企業にITを売り込むよりも高いスキルが必要になる」と語り、中小企業へのITに関する提案には、従来とは違った視点が求められていることを明らかにした。

エムズネット代表 三好康之氏

エムズネット代表 三好康之氏

 モデレータの平林氏は「経営とITはもはや切り離せない。経営上の1つ1つの問題を、どうやってITで解決していくかと提示していけば、経営者にIT投資を決断させられる。予算などの問題があっても、助成制度の利用と組み合わせて提案することで、成約につながることも多い」と議論をまとめた。

仮想化と電力・熱が2007年へのキーワード

 第3部では「IBMが考える 2007年 中堅・中小IT市場の動向」と題し、日本アイ・ビー・エム システムx事業部 事業規格 選任ITスペシャリストの川野 洋氏と日本エイ・エム・ディ エンタープライズビジネスデベロップメント本部 市場開発第一部インダストリー担当の渡邉浩平氏による講演が行なわれた。

 川野氏は2007年のx86サーバ市場におけるキーワードとして、「仮想化」と「電源・熱」、「クアッドコア」をの3つを取り上げた。

 仮想化に関しては、企業のIT関連費用のうち、運用管理における費用がシステム購入費用を上回っているデータを挙げながら、「これからは以下にシステムの運用管理のコストを下げるかが課題」(川野氏)とし、複数のサーバを仮想化によって1台にまとめることで、電気代やスペース、保守に関わる人員が下げられることを説明。さらに、仮想化によるサーバ統合によって保守費用を70%低減させた事例を紹介し、として仮想化のメリットを強調。

日本アイ・ビー・エム システムx事業部 事業規格 選任ITスペシャリスト 川野 洋氏

日本アイ・ビー・エム システムx事業部 事業規格 選任ITスペシャリスト 川野 洋氏

 また、電源・熱に関しても、今後サーバ運用による電気料金やそのための熱対策費がシステムの購入費を上回るレポートを提示しながら、同社の「Cool Blue」というサーバの消費電力と発熱を低減するソリューションを紹介した。

 そして、仮想化と電源・熱という2つのキーワードを解決するものとして、「数多くの仮想化支援機能を持ち、デュアルコアと同程度の発熱・消費電力で動作するネイティブ・クアッドコアのAMD Opteronプロセッサ」(渡邉氏)が紹介された。

日本エイ・エム・ディ エンタープライズビジネスデベロップメント本部 市場開発第一部インダストリー担当 渡邉浩平氏

日本エイ・エム・ディ エンタープライズビジネスデベロップメント本部 市場開発第一部インダストリー担当 渡邉浩平氏

■関連サイト
日本IBM
http://www.ibm.com/jp/
日本AMD
http://www.amd.com/jp-ja/

カテゴリートップへ