製品だけでなく、文化をもつくる力
Macworld Expoの基調講演で、ジョブズは言った。現在、米国における音楽販売事業者の順位で「アップル(iTunes Store)は4位だ」。
“Amazon.com”を抜いたとはいえ、アップルの上にはWalmart、Best Buy、Targetといった話題のCDを安く大量に売りさばく量販大手が控えている(ただし、米国は返品大国なので、こうした店舗で買われたCDは、後から開封後に返品されるというケースも非常に多い)。
確かに、音楽販売事業でのアップルはベストプレーヤーではないかもしれないが、それでも音楽販売ビジネスに与えた影響を無視することはできない。
アップルがiTunes Storeを発表した後で、どれだけ多くの会社が音楽配信ビジネスに参入したか。その際に価格の設定や、販売方法でどれだけ大きな影響を与えたか。アップルはただデジタル時代の音楽プレーヤーを作るだけでなく、デジタル時代の音楽業界そのものを変えてきた。
同様のことはMacに対しても言える。Macは、ただのマウス操作を広げたパソコンだけではなく、われわれの社会に大きな影響を与えてきた。DTPという出版スタイルも、パソコンを使ったプレゼンテーションも、マルチメディアという言葉も、DTM(デスクトップミュージック)やノンリニアビデオ編集という文化も、まずはMacと共に広がっていった。
以前、ドイツのテレビ局に米マイクロソフト社について聞かれたジョブズは「 マイクロソフトの唯一の問題は、彼らにセンスがないことだ。(中略)彼らは独創的な発想をせず、製品に文化が込められていない」と語っている。
アップルの製品には、業界を変え、文化を生み出す力がある。そう考えると、今回、発表されたiPhoneが、いかに大きな変化の幕開けなのかと期待が膨らむ。