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パイナップルやバナナからバイオ素材を開発するフードリボン ストローは東急ホテルズも採用

「東急アライアンスプラットフォーム 2023 Demo Day」レポート

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 東急グループは2024年3月12日、スタートアップを中心とした企業との事業共創を推進するプログラム「東急アライアンスプラットフォーム(TAP)」の2023年度総括イベント「東急アライアンスプラットフォーム 2023 Demo Day」を開催した。

 2023年度に協業に至った案件は23件。2015年の開始からの累計で、応募件数は1062件、協業件数は145件にのぼり、事業化や本格導入は46件、業務資本提携は9件となっている。

 2023年度のDemo Dayでは6つの共創プランのプレゼンが行なわれ、スタートアップと東急グループの担当者が各々のサービス概要やビジネスプランを紹介した。審査は、主に「新規性」、「成長性」、「親和性」、「(将来像の)蓋然性」がポイントとなる。

苔栽培によるカーボンニュートラルな駅づくり/株式会社グリーンズグリーン

株式会社グリーンズグリーン 代表取締役 佐藤 靖也 氏

 株式会社グリーンズグリーンは、土を使わずにシート上で苔を人工的に栽培する技術を開発している。同社の苔シートは、耐用年数30年間、草刈り不要で、植栽や雑草防除に比べるとコストが低いという。また、光合成と苔の仮根によるCO2固定により、CO2の排出が抑制できる特徴がある。

グリーンズグリーンが開発する、土を使わずシート状に苔を栽培する技術

 グリーンズグリーンと東急電鉄は「地下鉄構内未利用空間での苔栽培実証実験」を実施。地下の未利用空間で苔の生育に必要な環境を整え、地下の湧き水を使い様々な種類の苔を栽培した。苔を地下空間に栽培することで、東急電鉄は、CO2排出や湧き水排水の削減が可能となる。グリーンズグリーン代表の佐藤氏は「地下駅を苔の栽培工場にして、地下駅の緑化や線路脇・遊休地へ活用するビジネスを、東急から世界へと広げていきたい」と今後の展望を語った。

パイナップルの葉やバナナの茎からバイオ素材を開発/株式会社フードリボン

株式会社フードリボン 代表取締役社長 宇田 悦子 氏

 株式会社フードリボンは、沖縄県大宜味村に本社を置き、パイナップルの葉やバナナの茎といった農業残渣から繊維などのバイオ素材を開発するスタートアップだ。パイナップルの葉の繊維からはアパレル製品、紙、ファブリックなど、葉肉残渣からは飼料、バイオエタノール、バイオプラスチックなど、幅広い製品の生産を進めている。なお、フードリボンが生産したストローは、TAPでの取り組み以前から東急ホテルズで利用されているとのことだ。

地域住民と共に取り組む循環社会ビジネスモデル

 フードリボンはTAPへの応募を契機に、東急電鉄が推進する田園都市線地下鉄駅のリニューアルプロジェクト「Green UNDER GROUND」と連携を開始。東急電鉄らと共同で「駒沢大学駅前 地域循環プロジェクト“KOMAZAWA MOAI FARM”」に約半年間取り組み、地域住民と共に環境と循環をテーマにした農園を運営した。同社はプロジェクトの中で、生ごみや天然繊維をエネルギーと肥料に変える小規模メタン発酵や、そこから発生したバイオガスをコーヒー豆の焙煎に活かす仕組みを提供。また企業からの協賛品と交換可能な「MOAIポイント」を付与する仕組みを連携企業と共に設計し、参加者へのインセンティブとした。KOMAZAWA MOAI FARM内で複数回実施したイベントには、4ヵ月で2700名が参加し、大変な盛り上がりを見せたそうだ。フードリボンと東急電鉄は、駒沢で始まった取り組みを、沿線、そして日本中へ展開していきたいと意気込む。

可搬型木造住宅を活用したグランピング企画/株式会社キリンジ

株式会社キリンジ 代表取締役 天川 洋介 氏

 長期間にわたる暑さや寒さによる体調不良やプライバシーの確保、インフルエンザやコロナウイルスなどの感染症拡大、そして災害関連死。これらは、被災地における大きな課題だ。東急建設が開発した「モクタスキューブ」は、これらの課題解決を目指す可搬型木造住宅。その特徴は、プレハブと同等の1ヵ月という短期間で設置可能であり、現地作業が極めて少ない点にある。一般住宅と同等の性能と断熱・遮音性も備え、被災者にとって快適な住環境を提供する。

被災地の課題を解決する「モクタスキューブ」を平時にも活用

 被災時に活躍するモクタスキューブだが、平時にどのように運用するかが課題となっていた。そこで東急建設は、宿泊施設のプロデュースと超ローコストオペレーション運営を得意とするキリンジと協業。ディスカッションを経てキリンジは、平時にはモクタスキューブを客室露天風呂やサウナを設置したユニット連結型の住宅にすることを提案した。他方で災害発生時には、客室露天風呂やサウナユニットを切り離し、風呂からキッチン、トイレを備えたユニットのみを被災地へ運搬する。この仕組みを活用して、被災者の健康維持とプライバシー保護を支援し、災害関連死ゼロを目指す。

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