CDataサイト開設記念インタビュー後編

IT企業は東京じゃないとダメ? CDataの日本法人があえて本社を仙台に置く理由

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: CData Software Japan

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 CDataの日本法人であるCData Software Japanは、仙台に本社を構える。同社の疋田圭介代表社員に聞くCDataインタビューの後編は、エンジニアだらけの日本法人について、そして仙台にオフィスを置くメリットについて聞いた。(以下、敬称略 インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)

CData Software Japan 疋田圭介代表社員

エンジニアを大事にする組織を作ったらエンジニアだらけになった

――前半のインタビューでは、おもにCDataの存在意義をお聞きしましたが(関連記事:複雑なデータアクセスの課題 シンプルに解決するCDataの存在意義)今回は疋田さんが率いてきた日本の組織について教えてください。

疋田:弊社の製品はエンジニアやITプロがターゲットなので、弊社自体もエンジニアがハッピーに働ける組織を作ろうと思いました。DXって要はソフトウェア志向な会社になるということなので、エンジニアが働きにくい会社というのはありえない。だから、お客さまはもちろん、弊社のエンジニアも楽しくストレスなく仕事をできるような組織作りには注力してきたつもりです。

海外ではエンジニアの地位は高い。エンジニアの生産性も最大で5倍くらい違うと言われます。今後は日本でもエンジニアの地位が高くなるはずなので、弊社でもエンジニアが楽しく働ける環境を目指しています。そしてエンジニアを大事にする組織を作っていったら、会社がエンジニアだらけになりました(笑)。大事にしているのは、問題解決と共通理解のために、とにかく製品を触ることです。

――エンジニア組織に向けて、具体的にどのような施策を展開してきたのでしょうか?

疋田:まずはCData Software Japanが開発拠点であることです。日本で開発ができるフルスタックな拠点。これはエンジニアも喜びます。やりがいアップです。

たとえば、SaaSに関しては地域性があり、世界中の企業がグローバル製品を使っているわけではありません。日本であれば、サイボウズやスマレジなど、日本のユーザーに向けた製品展開に一日の長があります。でも、海外ツールは日本製品のコネクターがありません。だから、われわれが日本のSaaSをサポートするのはとても重要なことです。

――地産地消というわけですね。

疋田:実際に日本のコネクターめちゃくちゃ作ってます(笑)。だから、「日本の会社かと思っていました」とよく言われます。

国産SaaSのプロファイルやコネクターを開発

逆に言えば、日本でやっているこの取り組みを他の地域でも同じようにやっています。欧州で売れているツール、北米やインドで売れているツールもサポートしています。たとえば会計ツールは、北米ではQuickbooksが有名だし、東南アジアではSage、オーストラリアはMYOBが流行っています。

――各地域でローカルにフォーカスする戦略なのですね。

疋田:だから、日本企業が海外に展開するときも便利です。現地のベンダーに相談しなくても、データを取得できます。中国のERPのコネクターまであるので、日本企業が進出して連携も大丈夫です。

CI/CDを国内で回せる外資企業の日本法人はほとんどない

疋田:もう一つローカルで実現していることは、CI/CDを日本国内で回すことです。最初の頃はテキストファイルをこちらで翻訳して、本国でビルドしてもらったのですが、これだといつ反映されるかわかりません。3ヶ月ごとのリリース版を待たなければならない。

でも、日本進出して最初の3年くらいで、CI/CDを毎日回せるようにしたので、グローバルのエンジニアたちが当日開発したコードが翌日・翌々日のレベルで反映されます。こうした「Continuous Localization」ができているところはほとんどないと思います。

――これにはどういうメリットがありますか?

疋田:CI/CDを日本だけで回して、きれいなビルドが迅速に提供できるというのは、開発に関わっているエンジニアにとっても大事です。「本社がやってくれなくて~(涙)」という台詞で、お客さま対応しなくて済みます。

もちろん、エンドユーザーにとっても日本語版のHotFixが得られるって、とても重要です。なにしろ、日本で開発できるので、めちゃくちゃ迅速。お客さまやパートナーからの信頼感につながります。

――提供する側、提供される側、両方にとってヘルシーなんですね。

疋田:逆に言うと、お客さまからの要望をグローバルに投げることだけを求められているわけではありません。「うちの製品はこういう価値を提供するんだ」というプロダクトの製品のビジョンがあるので、これを理解しなければ、実装も難しいということ。本社から「君はうちの製品のことわかっていない」とはねられます。

だからわれわれは「お客さまが実現したいことを、うちの製品でどのように実現できるのか?」という方法まで含めて、発信しなければいけません。それくらい責任があり、タフという意味でもあります。ただ、ここらへんはうちのメンバーは楽しくやってもらえているようです。

――現在CData Software Japanには、どんな方々が働いているのですか?

疋田:おかげで、専門性の高いプロフェッショナルがうちで働いてくれています。日本で一番API触ってる人、データ分析にやたら強い人、ユーザーコミュニティに長けた人など、エッジのたった人がうちで働いてくれていて、本当にありがたいなあと。

――開発やサポート以外の業務はどうでしょうか?

疋田:たとえば、コンテンツに関しても、日本で好きなことやっていいと言われています。もちろん、設立当初から本社といろいろなやりとりがありましたが(笑)、今では「製品のことをきちんと理解しているお前たちなら、日本でもきちんと情報発信してくれるだろう」という信頼を得ています。

――「本社からの許しが~」とか、「APACの許可が~」という広報やマーケターの話を声ばかり聞いてきたので、すごく珍しいですね。

疋田:そうなんです。だから、当然Webサイトの管理も日本でやっていますし、記事やプレスリリースのチェックもありません。海外のコンテンツの翻訳や編集も日本側でやっています。でも、これすごく重要。結局、自由度がないと優秀な人は来ないですよ。

他社と同じことをやらなければならないという同調圧力から逃れられる

――最後になぜ仙台にオフィスをかまえているのか教えてください。疋田さんが仙台出身というのは知っていますし、コロナでエンジニアの地方採用が増えたのも理解しています。ただ、仙台にオフィスをかまえる会社は、まだまだ多いとは言えないので。

疋田:われわれはいわゆるB2D(Business to Developer)というビジネスを展開していますが、これって地方でもできるんですよ。

なぜかというと、顧客であるエンジニアが求めているものは豊富な情報と正しいプロダクトとサポートだからです。エンジニアの家に訪問して、押し売りしても、どうせ買ってくれない。フェイスツーフェイスで営業するより、正しい情報、プロダクト、サポートを提供すればいいので、仙台に本社があっても問題ないんです。

――コロナ禍でリモートでの打ち合わせもやりやすくなりましたしね。

疋田:もちろん仙台だからといって、お給料を安くするつもりもありません。いいエンジニアに対しては、しかるべく処遇で来てもらっています。仙台なら通勤も楽だし、家賃は安いし、住環境もいい。バーベキューも、釣りも、スキーもやり放題です(笑)。

――東京だと難しいことも、仙台ならできるということですね。

疋田:一番よかったのは、他社と同じことをやらなければならないという同調圧力から逃れられるところ。多くの会社は東京を選択しているつもりでも、別に選んでいるわけではないですからね。

その点、われわれは仙台にオフィスを構えることを選択した結果、「IT企業は東京じゃないとダメなんじゃないのか」という呪縛から最初から外れて、自分たちの価値やお客さまに提供できる強みを考えることができた。その後、コロナ禍になり、時代はリモート全盛になったので、われわれとしてはいい選択をしたと思っています。

――みなさん、仙台市内から通っているんですか?

疋田:今は仙台在住者が全体の2/3くらいで、オフィスに出てくるのはその半分。残りはリモートなので、東北はもちろん、東京、名古屋に分散しています。リモートとオフラインでギャップが起こらないよう、基本はチャットでログの残る形のやりとりにし、毎朝15分は全員参加のミーティングをやっています。

だから、うちはお酒を飲みに行く機会がありません。逆に言うと、飲み会でなにかが決まることもないです。週一回来ている人同士ではランチは行きますね。

――本社からももちろんOK出たと言うことですよね。

疋田:実はCData Softwareの本社もシリコンバレーやシアトルではなく、ノースカロライナにあるんです。

――すいません。ノースカロライナの場所、すぐにわからないです(笑)。

疋田:フロリダの2つくらい上で(笑)、アトランタの近く。リサーチトライアングルと呼ばれ、優秀な人材が多いのですが、田舎ではあります。レッドハットやSASなどの本社があるのですが、その面子からもわかるとおり、エンプラのシブい会社の多いところです。シリコンバレーのIT企業みたいな派手さは全然ありません(笑)。

――技術を持ってる「いぶし銀の会社」というイメージですかね。

疋田:そう。経営も、エンジニアも、地元出身が多いですし、テクノロジーの掘り下げ方も、お客さまとの関係も、時間をかけて極めていくみたいな感じ。日本もそういう本社のカルチャーを受け継ぎ、地に足のついた活動をしていきたいですね。

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