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社長と社員が語る「ワンプラットフォーム」「エコシステム」「全社展開」「テクノロジー」「AI」「グローバル」

6つのキーワードで「サイボウズNEXT」が見えた

2023年11月21日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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外部システムをkintoneから利用 2025年にはインフラ基盤も移行

 4つ目のTECHNOLOGYは、再び佐藤鉄平氏が登壇。最近のサイボウズの技術的なチャレンジについて説明した。

 最初に披露したのは、「外部システムのkintoneアプリ化」と呼ばれるもの。「kintoneの外側にあるデータやシステムに対してどうアプローチしていくのかが、kintoneの課題の1つ」と佐藤氏。これに対して考えた「kintoneらしいアプローチ」が、基幹システムやDWH、SaaSなどの外部システムのデータを、あたかもkintoneアプリのように扱えるというラッピングの仕組みだ。

 佐藤氏はkintoneアプリからAWSのデータベースサービスであるAWS RDSを扱うというデモを披露する。kintone上の商品マスタを表示し、レコードを編集すると、AWS RDSのデータも更新されている。kintoneアプリのように見えるので、ルックアップや絞り込みなども可能。「外部システムを扱うのも、いつものkintoneのように使えるようになっている」と佐藤氏はアピールする。現在は研究開発中というステータスだという。

左のkintoneアプリから右がRDSのデータベースを扱える

 次に披露したのはインフラについて。kintoneが開始して、すでに12年以上が経ち、ユーザーもデータもリクエストも増え続けており、スケーラビリティ、パフォーマンス、可用性、開発生産性などさまざまなスペックを底上げする必要性に迫られているという。この課題を解決すべく、新たに構築されているのが「NECO」と呼ばれるインフラ基盤になる。NECOへの移行は2025年に完了する予定だが、検索など一部のコンポーネントはすでに移行済み。佐藤氏は「みなさんに気づかれないように移行するのが、ある意味プロジェクトの成功でもある」と語り、安定運用に注力する姿勢をアピールした。

 フロントエンド基盤の刷新も進んでいる。高品質で一貫性のあるデザインを提供するための「kintoneデザインシステム」を構築し、デザインのガイドラインやコンポーネントを体系的に整理しているという。今までは、ボタン1つとっても微妙に異なるデザインが操作に影響を与えていたが、デザインシステムの導入で、今後は誰でも使える統一した操作体験を行なえるとのこと。現時点では社内のみでの利用だが、今後は社外にも公開し、パートナーのサービスのデザインにも一貫性を持たせていきたいという。

これからは人間同士でなくAIも含めた情報共有を

 5つ目のテーマは、今年特に注目度の高いAI。佐藤氏はサイボウズ・ラボの西尾 泰和氏を召喚し、AI関連の取り組みを披露する。西尾氏は知的生産性について研究する中、AIに行き着き、本社との共同チームである「AIエキスパートチーム」の統括も担当している。

サイボウズ・ラボの西尾 泰和氏

 まず聴衆との意識あわせとして、佐藤氏が「なぜこんなにAIが盛り上がっているのか?」と質問すると、西尾氏は「AIがコミュニケーションを理解できるようになってきた」と答える。今までコンピューターに対してプログラミング言語で指示をしていたが、これが自然言語、しかも日本語を使って指示できるところが画期的とのこと。現時点では、大規模言語モデルを用いたテキスト生成技術を用いて、下書きまでをAIに任せ、人間がチェックするというような利用法が時短や精度の面でオススメだという。

 続いて「kintoneやグループウェアは、AIを組み合わせるとどうなのか?」という質問。これに対して西尾氏は、「非常に相性がいいと思う。チームでの情報共有にAIはフィットする」と答える。個人がメールの生成でAIを使っても個人の生産性向上にしかつながらないが、チームで共有されている情報をAIで処理すると、チーム全体のパワーが強化されるからだという。

 たとえば、今年リリースされたサイボウズ Office AIのβ版では、掲示板のタイトルを入力すると、AIが本文を書いてくれるというもの。AIで書かれている下書きへのチェック・修正履歴をチームで共有することで、どの部分に気をつければよいかを人間も理解できる。佐藤氏が「AIを育てていくところをチームで共有することで、育ったAIの恩恵がチームに還元されていくということ」とコメントすると、「これからは人間とAIの情報共有が必要になる」と西尾氏は語る。

 西尾氏は、AIに関してはインターネット黎明期のようにまだ立ち上がったばかりだが、今後数年で出てくるサービスが市場を大きく変える可能性があると指摘。とはいえ、まだまだ未知数ではあるので、サービスをチームで使いこなす必要があると語った。サイボウズでもChatGPTを活用しているが、チーム内でAIへのフィードバックを行なっている。また、人事制度やITに関わる社内制度のFAQもAIが導入されているという。

kintoneからChatGPTが使えるプラグイン、M-SOLUTIONSがデモを披露

 AIに関しては、サイボウズのパートナーも積極的に取り組んでおり、パートナーのAI導入を加速するファンドも立ち上げた。今回はこうしたパートナーのうち、kintone内でChatGPTを利用できるサービスを発表したM-SOLUTIONSの代表取締役社長の植草学氏が登壇した。

M-SOLUTIONS代表取締役社長 植草学氏

 SBテクノロジーの子会社にあたるM-SOLUTIONSはクラウドSI事業に加え、kintone関連も含めたプロダクト事業、自治体DX事業などを手がける。kintoneの開発案件は累計ですでに1000件を超えており、資格を持つkintoneエンジニアも数多く抱えている。

 10月末にリリースした「Smart at AI for kintone Powered by GPT」は文字通りkintone内でChatGPTを利用できるサービスになる(関連記事:kintone内でChatGPTの利用が完結するプラグイン、M-SOLUTIONSが提供開始)。今まで別のツールだったために、従来コピペが必要だったChatGPTとkintoneだったが、Smart at AI for kintone Powered by GPTを利用することで、まさにChatGPTを搭載したkintoneとして利用できる。動的にセールストークを生成したり、顧客の問い合わせ対応やデータの分析、議事録の作成・要約、ブログ記事やメルマガの作成や管理など、さまざまな業務をAIがサポートする。

 植草氏は設定済みのプロンプトを使って日報や稟議書を作成するデモを披露した。さまざまな業務ですぐに使えるテンプレートを搭載した有償版に加え、「AIを民主化させたいので、OpenAIのAPIを登録すれば使える無償版も用意した」(植草氏)とのことだ。

日報でのデモ。フォーマットに合わせてAIが日報を自動生成

 最後のテーマの「GLOBAL」に関しては、日・中・英に加え、スペイン語への対応も表明。日付フォーマットや数値フォーマットもグローバル対応していくという。基調講演の残りの時間は、会場からの質問に答えるコーナーに当てられ、メール共有機能、全社外部連携、AI活用などについて登壇メンバーが答えた。今までコンセプト先行だった「サイボウズNEXT」を、サイボウズ社内で具体化していることが伝わる講演内容だった。

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