第13回 and SORACOM

チャレンジはいつのまにか自分たち、お客さま、社会の「三方よし」になっていた

残量検知デバイスでエンジンオイル販売を変えたFUKUDAとSORACOM

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

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困ったときのビジネスマッチング 地元の支援をフル活用

 オプテックス MFGとの出会いは、やはり京都市と京都商工会議所によるビジネスマッチングだったという。「なにか困ったことがあるたび、地元のビジネスマッチングに頼りましたが、結果的によかったと思います。私たちはやりたいことやゴールが明確にあって、事業者への説明もぶれませんでした」(福田氏)

 通信のためのSIMに関しては、オプテックス MFGが利用しているソラコムを採用した。以前の残量検知デバイスでは、大手キャリアのSIMを使っていたが、小規模で購入枚数が少ないため、期待していたサポートやディスカウントは受けられなかった。これに対してソラコムは困りごとに対してFUKUDAと伴走し、対面でサポートをしてくれたという。「オプテックス MFGさんのデバイスの部品メーカーとしてはなく、通信における私たちのパートナーとして、打ち合わせに参加してくれますし、前向きになれます。これが一番大きかったですね」(福田氏)

 こうして生まれた新しい残量検知デバイスと、見える化を実現する「オイルマネジメントシステム」を組み合わせることで、顧客のドラム缶内のオイルの量をリアルタイムに検知できるようになった。また、過去のデータと現在のデータを掛け合わせ、いつ枯渇できるのかを予想し、カレンダーに登録されているという。「今まで『なくなったら、入れにいく』というスタイルだったのが、どこにいつ配送するか、1ヶ月のスケジュールを立てられるようになりました」(福田氏)。また、バッテリで動作し、センサーも通信も無線なので、設置が容易になったのも大きかったという。

お客さま先に設置するタンク

黒いユニットが残量検知デバイス

 そして、この残量検知デバイスの導入と同時に始めたのが、オイルの量り売り「IBCローリーサービス」だ。これはドラム缶単位で無駄の多かった配送を、リットル単位の量り売りにしようという試みだ。

 一口にオイルと言っても、さまざまなメーカーや種類があり、FUKUDAの場合、メーカーは35社、約1500種類のオイルを扱っている。しかし、売上の2割を占めるのは、このうち5つのエンジンオイル。そのため、FUKUDAでは、これらを1000リットル搭載のタンクで量り売りにし、効率的な販売を実現した。

ローリーを用いた量り売りを提供するように

 この量り売りは、環境負荷の低減にも寄与している。実はオイルのコストの1/10はドラム缶が占めており、しかも再利用が難しいという弱点がある。しかし、FUKUDAの場合は、オイルがタンクローリーで供給されるため、ドラム缶での納品が不要になる。ドラム缶の利用がまるまるなくなるという点で、この販売方法は画期的だ。環境負荷の軽減につながっていることが認められ、同社はオイル販売事業者として初めてエコマークを取得することが可能になったという。

オイル管理という業務をなくすことで顧客のメリットに

 残量検知デバイスの導入は、FUKUDAにとって大きな業務効率化の軽減につながった。この4年間のデータを見ると、従業員の休日は年間で15日も増え、空いた時間は新規顧客の開拓に充てられるようになった。また、量り売りに関しては、市場に対して環境負荷の低減という価値を生み出した。

 とはいえ、以前は顧客のメリットにはつながっていなかった。「なくなる前にオイルを入れに行く」という価値の実現を、営業マンの頭の中でやっているのか、センサーとシステムでやっているのかは、顧客にとってはあまり関係ないからだ。しかし、最近はオイルの発注や管理に手間をとられない」ということに大きなメリットを感じる顧客が増えているという。「われわれのお客さまである自動車の修理工場は、深刻な人手不足に悩んでいます。こうした中、FUKUDAにオイルの管理を任せておけば安心という声をいただけるようになりました」と福田氏は語る。

 残量検知デバイスのない通常のオイル配送業者の場合、顧客に毎回残量を問い合わせなければならない。コロナ禍は対面接触も難しかったので、営業マンは訪問できず、顧客も問い合わせ対応に時間をとられてしまう。しかし、FUKUDAの場合、営業が担当している顧客の残量を把握しているので、「明日行きますね」で話が済む。「ついでに今まで別の会社におねがいしていたこのオイルも持ってきてくれる?という話になるんです」(福田氏)

 この数年でエンジンオイルの価格はおおむね高騰化したため、価格での競合は難しいため、残量検知デバイスや量り売りなどのサービスの差別化は特に大きくなった。最近、サービスに魅力を感じて問い合わせしてくるのは、増やしたいと考えていた中堅や大手の事業者だ。「物流業界も人手不足なので、オイルもすぐ届くような状態でもない。でも、せっかく土日にお客さまが来店してくれたのに、オイルがないとなると、機会損失になります」と福田氏は指摘する。

 その点、FUKUDAの場合はオイルが切れる前に配送されるので安心だ。現場ではオイルの発注や在庫管理という業務が完全になくなるため、働き方の改善につながる。人手不足の昨今、経営者はこうした従業員満足度につながるサービスに対して、以前よりも前向きになっている。 また、今後はユーザー企業の経営者もオイルの利用状況や発注量を見られるようになる予定。提供する側も、提供される側もメリットのある「オイル管理のマネージドサービス」になったわけだ。

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